研究課題/領域番号 |
17K15998
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 進 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10725831)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PCSK9蛋白濃度 / 虚血性心疾患 / 冠動脈形成術 / スタチン / 冠動脈内イメージング |
研究実績の概要 |
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)長期投与によるLDL-C低下減弱作用(スタチンエスケープ現象)は約10-20%の症例で起こるとされ、コレステロール吸収の亢進やLDL 受容体分解に関与する血漿前駆蛋白転換酵(PCSK9)の産生亢進などのメカニズムが示唆されているが心血管系への影響については明らかにされていない。本研究では、冠動脈形成術を要する虚血性心疾患患者において、冠動脈内イメージング検査を検討することにより、スタチンエスケープ現象有無での冠動脈プラーク量および組織性状の変化を比較し、更に一般的な脂質プロファイルに加えPCSK9蛋白濃度やアポリポ蛋白濃度などの測定値も検討することで、その心血管系への影響をメカニズムの観点からも明らかにすることを目的としている。 これまでのところ、上記のプロトコルの最終的な立案を行い、当院の生命倫理委員会に提出し承認を得られたため、すでに冠動脈形成術を施行した約200名の症例に対して研究計画を進めている。具体的には、PCSK9蛋白濃度、アポリポ蛋白濃度の測定をしており、IB-IVUS (integrated backscatter intravascular ultrasound) を用いた冠動脈血管内超音波画像のプラーク量・組織性状の解析、および対象症例のデータベースの構築についても同時に進行中である。これらのデータとカテーテル治療のフォローアップ時の臨床データを今後解析・発表することによる臨床意義は大きく、PCSK9阻害薬、エゼチミブを中心としたスタチンへの併用薬剤の選択や治療効果など虚血性心疾患の二次予防治療戦略への学術的波及効果を期待できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施に関しての最終的なプロトコルの調整で、研究計画の具体的な立案に時間を要したこと、また研究実施にあたり生命倫理委員会での申請と審議等に時間を要したことが原因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、冠動脈形成術を要する虚血性心疾患患者において、PCSK9蛋白濃度やアポリポプロテインなどスタチンエスケープ現象に寄与すると考えられる指標と冠動脈内イメージング検査結果を検討することにより、冠動脈疾患二次予防法におけるスタチンとの併用薬選択などのエビデンスの構築が期待できる。倫理委員会からの承認後、症例の組み入れは順調に進んでおり、当院での豊富な虚血性心疾患治療の実績から、最終的な組み入れ数に関しては問題ない程度になると考えられる。平成29年度には、虚血性心疾患症例に対してPCSK9蛋白血中濃度測定を施行したが、現時点で冠動脈プラークの解析までの検討は施行できておらず臨床データ、患者背景との関係性の評価にとどまっている。このため、平成30年度には症例登録を十分に進め、改めてプラーク組織性状との関係性につき検討するとともに心血管イベントの有無など予後との関連についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の実施が遅れていることから、実際に使用する機器の購入などがまだできておらず、このため未使用額が生じた。今後は機器の購入の他にも、情報収集のための学会出張や論文執筆・投稿等の費用が必要になると考えられる。
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