研究実績の概要 |
この度の我々の研究は、虚血性心疾患患者において、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)長期投与によるLDL-C低下減弱作用(スタチンエスケープ現象)に寄与すると考えられるPCSK9蛋白濃度と冠動脈内プラークの性状との関連性を調査することであり、主に冠動脈の組織性状との相関性が強い、integrated-backscatter intravascular ultrasound (IB-IVUS)を用いて検討を行った。 本院において、経皮的冠動脈インターベンションを施行した194名の安定狭心症患者に対して、責任病変部の冠動脈プラークを検討した。方法として、血管内超音波(IVUS)でも、冠動脈プラーク組成を解析することができるintegtrated-backscatter IVUS(IB-IVUS)を用いて、血中PCSK9蛋白濃度と、percent lipid volume (%LV)について関連性を調べた。結果、高PCSK9蛋白濃度群(2分位)では、低PCSK9蛋白濃度群に比し、%LVが高い傾向を認めることがわかった(54.4 ± 10.2% vs. 51.6 ± 10.4%, P=0.069)。これらの検討結果は、PCSK9蛋白濃度が高い責任病変部の方が低いPCSK9蛋白濃度群に比し、脂質成分に富む不安定病変である可能性が認められた。一般的にそのような冠動脈プラークは急性冠症候群や心血管イベントの再発を引き起こす可能性がある不安定プラークと関連することが知られており、スタチンエスケープ現象を呈する患者における心血管イベントの増加と関連性がある可能性があり、今後、さらなる症例の集積により冠動脈疾患二次予防におけるスタチンとの併用薬選択、特にPCSK9阻害薬の投与方針などのエビデンスの構築が期待できる注目すべき研究結果が出た。
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