研究実績の概要 |
生体の心臓を構成する心筋細胞には、心室筋、心房筋、ペースメーカー細胞などの様々なサブタイプが存在している。しかし現状のヒトES/iPS細胞からの心筋細胞分化誘導技術は、心室筋、心房筋、ペースメーカー細胞などの全ての心筋細胞のサブタイプが混在している。またヒトES/iPS細胞由来心筋細胞は、胎児期の心筋細胞に近い性質を有しており、成人の心筋細胞に比べ、未成熟であることが示唆されている。申請者は、これまでUosaki, PLoS One, 2011で報告した方法をもとに改良し、長期間高純度の心筋細胞を維持できる新しい心筋分化誘導法(高純度心筋分化誘導法) を開発した。本研究では、この高純度心筋分化誘導法をさらに改良し、ヒト成人心臓に近い成熟した心室筋及び心房筋細胞を、それぞれ単独に分化誘導・成熟化できる技術を開発することを目的とする。 先行研究において、高純度心筋分化誘導法により作製した心筋細胞は長期培養が可能であり、電気生理学的解析から一定の成熟度を示すことがわかった。本年度は、活動電位以外の成熟度の指標となる細胞内構造、形態、代謝などの解析を検討している。また心室筋細胞または心房筋細胞への分化に関与する因子および培養環境の探索を検討しており、より心房筋様細胞への分化に傾ける培養環境の予備的結果を見出した。しかし、電気生理学的解析までは行えておらず、今後さらなる詳細な解析と確認を必要としている。
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