本研究は、心筋梗塞の重症度や心筋viabilityを評価するため心室内腔の表面凹凸、ならびに急性冠症候群に関する不安定プラークを予測するため血管内プラークの表面凹凸を、心臓CTを用いて自動解析による定量評価すること、また臨床的有用性を検討することであった。 まず心臓CTで心室内腔の表面凹凸の解析を試みたが、心室内腔は肉柱構造で正確に心内膜を描出することが困難であり、誤差が著しく評価することができなかった。冠動脈内にプラークに関する表面凹凸においても、CTの解像度の問題で評価困難であった。そこで、プラークが多量に検出できる胸部大動脈内のプラークの表面凹凸を定量評価できるか、またそれが不安定プラークの指標になり得るか検討を行った。 胸部大動脈内のプラークの表面凹凸は、血管全体ならびに動脈硬化のプラーク部位の凹凸を、自動的にトレースし定量解析する解析が可能であり、目標を達成することができた。また、その臨床的有用性について、プラークの凹凸度合いを、虚血性心疾患と非虚血性心疾患と比較検討したところ、虚血性心疾患にて凹凸度合いが高い傾向が示され、リスク因子になり得る可能性が示唆された。今後、さらに症例数を増やし、本研究の信頼度を上昇させたうえで、論文作成へ進める予定である。 本研究で示したプラークの凹凸は、新たな知見であり、虚血性心疾患のリスク因子として、臨床診療を行ううえで、有用性が高いと考えられる。また、評価した箇所が胸部大動脈であるため、心臓CTだけではなく、通常の造影CTでも評価することが可能であり、汎用性が高いと考えられる。さらに、脂質異常症、糖尿病などを治療するうえでの効果判定するうえでも、臨床的意義が高いと考える。今後、プラーク凹凸を3次元的にカラーマッピングし、視覚的に理解しやすくさせるなど、さらに臨床上、役立つよう活用できる可能性があると考えられる。
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