研究実績の概要 |
慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)は高頻度に治療抵抗性高血圧を呈する。CKD合併高血圧の病態に交感神経活動亢進が深く関わり、その機序に脳内血管運動中枢における酸化ストレス亢進に起因する中枢性交感神経活動活性化の関与が示唆されている。近年CKD合併高血圧に対し腎除神経術(renal denervation; RDN)の有効性が報告されている。一方、実臨床ではCKD合併高血圧に対しアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が汎用されているが、ARBとRDN併用の効果、及び中枢性交感神経活動への影響等に関し不明な点が多い。 今回CKD合併高血圧モデル動物に対するARBとRDN併用の降圧効果、及び交感神経活動や中枢神経の調節系へ与える影響を検証した。 雄性ICRマウスに5/6腎摘出術を施し高血圧合併CKDモデル(Nx-mice)を確立した。Nx-miceはsham手術を施したマウス(Control-mice)と比較し高血圧、腎障害を呈し、交感神経活動の指標である尿中ノルエピネフリン排泄量(uNE)も増加していた。また、血中レニン活性、アルドステロン濃度は高値を呈し、左室肥大、及び尿中アルブミン排泄量の増加を認めた。Nx-miceへのARB単独投与群(Nx-ARB)、及びARB投与とRDN併用群(Nx-ARB-RDN)は共に降圧反応、交感神経活動抑制、左室肥大及び尿中アルブミン排泄量の抑制を認めた。Nx-ARB-RDN群ではNx-ARB群と比較し、更なる降圧反応、血中レニン活性及びアルドステロン濃度の抑制を認めた。脳内血管運動中枢(視床下部)での酸化ストレス(TBARS法)はNx-ARB, Nx-ARB-RDN群において共に抑制されていた。 CKD合併高血圧に対するARBとRDN併用療法はARB単独よりも有用な治療法である可能性が示唆された。
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