平成29年度には、ラットのレニンアイソフォームのmRNA発現解析のためのPCRプライマー作成を行い、さらに心不全モデルラットの作成を行った。平成30年度は、前年度の成果を発展させ、心不全ラットの脳内レニンアイソフォームの発現解析を行った。全脳を用いたレニンアイソフォームのmRNA発現解析では、心不全ラットと対照のsham手術ラットの両群間で、分泌型レニンならびに細胞内レニンいずれも発現量に有意差を認めなかった。次に、交感神経活動を規定する重要な脳神経核である視床下部室傍核および頭側延髄腹外側野におけるレニンアイソフォームの発現解析を行った。頭側延髄腹外側野において、分泌型レニンmRNAは心不全ラットで有意に増加していたが、細胞内レニンmRNAは両群間で有意差を認めなかった。視床下部室傍核においては、分泌型レニンmRNAは心不全ラットで増加傾向を示し、細胞内レニンmRNAは両群間で有意差を認めなかった。これらの結果より、交感神経活動を規定する脳神経核での分泌型レニン増加が心不全の病態に関与している可能性が示唆されたが、本研究開始時の仮説である心不全における細胞内レニン低下を伴う分泌型レニン増加を確認することはできなかった。今後は、神経細胞株を用いたin vitroでの実験でレニンアイソフォームの発現調節について検討が必要と思われる。
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