ケトン体は主に肝臓において産生され、他の臓器で消費されるが、ケトン体の合成と利用は様々な因子により制御されている。ケトン体はエネルギー基質としての重要性とともに、βヒドロキシ酪酸などはシグナル因子や内因性のHDAC阻害作用なども報告されており、多面的な働きが注目されている。一方で、胎児期や幼児期などの環境においてはケトン体合成が大きく変動することも報告されているが、その意義は明らかでない。本研究では周産期環境におけるケトン体合成の意義を明らかにすることを目的として、CRSPR/Cas9法を用いてケトン体合成の律速段階酵素であるHmgcs2の機能喪失マウス(Hmgcs2 KO)を作成した。 Hmgcs2 KOマウスは、出生直後(P0)において、肝臓の外観及び組織所見に明らかな差は認められなかったが、肝臓が授乳開始後より急速に腫大し、顕著な異所性脂肪沈着を定することが明らかとなった。電子顕微鏡にてHepatocyteの形状を確認すると、Hmgcs2 KOマウスのHepatocyteでは小滴の脂肪滴が核の変位を伴わずに大量に蓄積しており、小滴性の脂肪沈着所見であることが明らかとなった。 より詳細な検討を行うため、生後3日目のサンプルを用いてメタボローム解析を実施した結果、解糖系は大きく抑制されている一方で、アセチルCoAはHmgcs2 KOマウスで有意に上昇していた。一方でTCAサイクル内の代謝産物はHmgcs2 KOマウスで有意に低下しており、ミトコンドリア機能不全が示唆された。また、機能不全の原因について検討を重ねた結果、ミトコンドリアタンパクのアセチル化が亢進していることが確認された。
|