研究課題/領域番号 |
17K16018
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
三阪 智史 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (50793080)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セルフリーDNA / メチル化解析 / 心不全 |
研究実績の概要 |
実臨床において、心疾患は単一遺伝子で決定される例は多くはなく、ほとんどは環境要因や遺伝的素因が複雑に影響し発症する多因子疾患である。環境因子がどのように遺伝子情報に作用するかについては、エピジェネティクスといわれるDNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステムが重要な役割を果たしていることが明らかになってきたが、心臓リモデリングの進行における DNAメチル化についてはその意義についてはまだ 一定の見解は得られていない。まずは雄性C57BL/6J野生型マウスに大動脈縮窄(Transverse Aortic Constriction, TAC)による圧負荷モデルを作成した。TAC1週後の心肥大期および4週後の心不全非代償期のモデルを用いて、DNAおよびRNAを抽出した。DNAをバイサルファイト処理し、メチル化・非メチル化特異的プライマーを用いて、DNAメチル化の評価を行った。遺伝子発現と関連するプロモーター領域CpGアイランドにおいて、DNAメチル化解析を進めている。 また、心不全の病態においては心筋細胞が非可逆的に障害を受けると心筋細胞のトロポニンが血中に流出し、それが心不全のリスク評価・治療指標となると認識されているが、同様に血液中に流出・循環すると考えられているセルフリーDNAの心不全における意義はこれまで検討されていない。健常者および患者血液から得た血液サンプルを、細胞成分を遠心分離し、血清中よりセルフリーDNA を抽出する。セルフリーDNAのメチル化解析を行い、臨床像と比較することで、それが新しいバイオマーカーおよび脱メチル化をターゲットとした治療対象になり得るかどうかを検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトセルフリーDNAは微量であり、抽出方法の標準化やDNA量測定方法の確立に時間を要した。同時に収量の問題から、網羅的なメチル化解析は困難であり、今年度は特定部位のメチル化解析にとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
マウスモデルにおいては、引き続きDNAメチル化解析を行う。続性低酸素肺高血圧による肺高血圧モデルも同時に作成し、右心不全モデルと左心不全モデルで比較検討する。DNA メチル化異常が心不全の進行に原因として関与しているのか、あるいは単に心不全という病態の結果なのかを明らかにする。メチル化解析の結果、メチル化の増加が確認された不全心において、DNA メチル化阻害剤として、5-aza-2'-deoxycytidine (5azadC)の投与を行い、その後の心機能および予後改善 効果があるかを検討する。 ヒトセルフリーDNAメチル化解析については、まずヒトセルフリーDNAの収量を増やし、網羅的なメチル化解析を行うことを検討する。臨床像や各バイオマーカーや心機能検査指標と対比し、DNA メチル化が新しい診断のバイオマーカーや病勢のモニタリングの指標になり得るかどうかを 検討する。 ヒト心筋生検材料は限られており、侵襲が少ないヒト血液サンプルを用いたセルフリーDNA のメチル化を解析し、これが新しいバイオマーカーとなることが期待される。メチル化の増加がある症例には、DNA メチル化阻害剤 が新たな心不全治療法となることが期待され、各個人をターゲットとした治療適応を決定できる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAメチル化ELISAアッセイキットおよびプライマーの追加購入が当該年度度内に購入できなかったため。それを次年度に予定する。
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