昨年度に引き続き、ヒト末梢血単球サブセットと冠動脈イベントの関連性の検討を行った。今回、安定狭心症が疑われ冠動脈造影検査が施行された合計271名を対象とした。結果的に有意狭窄を認めず薬物療法での経過観察となった136名を薬物療法群とした。冠動脈造影検査時に単球サブセットの測定を施行した。平均追跡期間は1416日であり、CD14陽性CD16陽性単球の割合は、冠動脈イベントを発症した群で有意な上昇を認めたが、初回冠動脈造影時に冠血行再建の方針となった群とは有意差を認めなかった。CD14陽性CD16陽性単球の上昇が、将来的な冠動脈イベントとの関連が示唆された。また初回冠動脈造影時に血行再建を回避可能であっても、CD14陽性CD16陽性単球が高値の患者群においては将来イベントを発症することが判明した。炎症性サイトカインに関しては、IL10、フラクタルカインについては有意差を認めなかったが、TNF-αもCD14陽性CD16陽性単球同様に上昇を認めており、関連性が考えられた、次に、冠血行再建を選択された患者群において、将来的に再度血行再建を行った群と行わなかった群の比較を行ったが、こちらは単球サブセットに有意な差は検討されなかった。初回冠造影検査時に治療が必要な患者群では、既に高リスク群であると考えられ薬物療法を含めた厳重な管理が行われており、そのため有意差がみられなかったのではないかと考える。しかしながら、冠動脈インターベンションを施行した群と比較し、冠動脈バイパス群では、CD14陽性CD16陽性単球が有意に高値であり、冠動脈疾患の発症進展には少なからず関連していると考えられた。
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