来院時高血糖を呈する急性心筋梗塞患者は、糖尿病の有無に関わらず予後不良であることは多くの先行研究で報告されている。我々は心臓MRI検査を用い来院時高血糖を呈する急性心筋梗塞患者では有意に微小循環障害(MVO)を来すことを報告した。近年、SGLT-2阻害剤は糖尿病治療薬としての有効性のみならず、心血管イベントを抑制するという観点から注目されている。SGLT-2阻害剤を心筋梗塞急性期に投与することでMVOの発生率および梗塞範囲を減少させることができるのではないかという過程のもと、マウスを使用した基礎研究を行ったが、研究期間中に証明することはできなかった。そこで、現在、日本において深刻な問題となりつつある心不全、特に左室駆出率が低下した非虚血性心筋症(拡張型心筋症:DCM)に着目し、DCM患者を心臓MRI遅延造影パターンで3群に分類し、3群間における左室reverse remodeling(LVRR)、予後を比較検討した。DCMの遅延造影パターンは、心室中隔中部線状遅延造影(mid-wall LGE)が典型的であるといわれている。しかし実臨床では、非典型的な遅延造影を呈するDCM患者も散見され、このパターンの遅延造影をmultiple LGEと定義した。すなわち、遅延造影を呈さない群(no-LGE群)、mid-wall LGE群、multiple LGE群の3群に分類し、LVRR、予後(心不全と致死的不整脈の複合イベントの発生率)に関して後ろ向き観察研究を行った。結果、multiple LGE群が他の2群と比較して有意にLVRRを来さず、予後不良であることが明らかになった。この研究については、論文作成が完了し、投稿中である。今後、さらに研究を継続し、最終的にはDCM患者(特にmultiple LGEを呈する患者)におけるSGLT-2阻害剤の有効性を検討したい。
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