研究課題
本研究ではイソプロテレノール(ISP)負荷不全心筋モデルマウスに胎生蛋白制御因子セマフォリン3A(Sema3A)を投与することで、不整脈や心不全の抑制を図るという方法論を検証し、心筋の電気的・構造的・機能的リモデリングに対する根本的で新たな治療概念を確立することを目的としている。control群・ISP負荷群(不全心筋モデル)・ISP+Sema3A群(不全心筋治療群)の3群で以下の評価を行い比較した。組織学的評価ではISP群で心筋の線維化が亢進しており、交感神経の分布はISP群で増加し、ISP+Sema3A群で抑制されることが確認された。電気生理学検査ではISP群で延長した単相性活動電位持続時間20%回復時間(MAPD20)がISP+Sema3A群で改善した。心エコー図ではISP群で低下した左室収縮能がISP+Sema3A群で回復した。また、心筋イオンチャネル関連因子やカルシウムハンドリング関連因子についてmRNAの発現を定量的リアルタイムRT-PCRを用いて評価した。一部のカリウムチャネル関連因子およびカルシウムハンドリング関連因子においてISP負荷群での発現低下とISP+Sema3A群での回復が示され、電気的・機能的変化を裏付ける機序として妥当であると考えられた。しかし、蛋白発現レベルではカリウムチャネル関連因子の変化はみられたものの、カルシウムハンドリング関連因子には変化がみられなかった。左室収縮能の変化は心筋の線維化の程度に依存する可能性が示唆された。本研究ではISP負荷不全心筋モデルにおいて、Sema3Aが不全心筋に対して電気的・機能的・構造的な逆リモデリング効果を発揮することを示した。研究成果は学会発表として公表したのち、今年度は論文執筆を完了させて学術雑誌への投稿を行った。論文は既に受理されており、掲載予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
International Heart Journal
巻: 64 ページ: -