研究課題/領域番号 |
17K16026
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 恒徳 日本医科大学, 医学部, 助教 (00716631)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オートファジー / 拡張型心筋症 / 心不全 / 循環器内科学 |
研究実績の概要 |
オートファジーは細胞の自己成分を分解しアミノ酸として再利用する作用である。基礎的にオートファジーの細胞保護作用が研究されているが、臨床検体における評価は困難で、その臨床研究はあまり進んでいない。本研究では、ヒトの不全心筋におけるオートファジーを予後・画像所見を含めた臨床像や分子遺伝学的情報と比較することにより、心不全の重症度を非侵襲的に予測し悪化を予防する方法を見出すことを目的としている。最終的にはDCM患者における心筋症関連遺伝子発現およびオートファジー関連遺伝子発現の網羅的探索を行い、組織および臨床像と比較して予後予測に有用な遺伝子を見出そうとしているが、本年度はその前段階として、病理学的に見出した現象から以下に示すようなDCMにおけるオートファジーの臨床的な役割を見出した。 (1) 心筋細胞の変性像、オートファジー空胞の有無を心臓MRI遅延造影画像(CMR-LGE)、左室逆リモデリング(LVRR)の有無および生命予後と比較した結果、オートファジーはCMR-LGEに比較しはるかに鋭敏なLVRRおよび生命予後の予測因子であった。(2)好酸球性心筋炎のうち自己免疫性素因のあるものはしばしば二次性DCM様の病態を示す。多発筋炎の一種である抗ミトコンドリアM2抗体陽性筋炎を併発した好酸球性心筋炎の心筋、骨格筋を抗ミトコンドリアM2抗体の抗原であるピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC-E2)で免疫染色を行った結果、両者とも陽性であった。PDC-E2はオートファジー制御との関連が報告されており、この様相を電子顕微鏡的に確認できた。(3)二次性DCMの一つであるムコ多糖症IS型の心筋細胞におけるlysosomeの電顕観察を行った。オートファジー不全の影響を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目ではオートファジーとDCM患者の臨床像および病理像の解明を行う予定であったが2年次に予定していたDCM患者のオートファジーと他の病理所見との関係についての研究まで進めることができた。また2年次に行う予定であるDCM患者におけるオートファジー関連遺伝子および心筋症関連遺伝子の探索について、DNAを現在抽出し保存してある者だけでなく、「オーダーメイド医療の実現プログラム」研究に参加しバイオバンクジャパンIDを有している162名のDNA抽出まで行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年次はDCM患者におけるオートファジー関連遺伝子および心筋症関連遺伝子の探索を推進する。全エキソーム解析を行い、バイオインファマティクス解析を施し、組織および臨床像と比較して予後予測に有用な遺伝子を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
全エキソーム解析についてバイオバンクジャパンにおけるオーダーメイド医療実現化プロジェクト試料等配布審査会の結果を待ち理研ジェネシス社と値段・症例数・解析の時期などを含めた交渉を行ったため、やや日程がずれてしまった。現在解析を行っており、研究は計画通り進行中である。
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