研究課題
心不全患者にはサルコペニアの患者にとどまらず、悪液質を合併した患者も非常に多い。その背景には、病態的に消耗性疾患として異化が亢進しやすい上に、腎機能障害を有する患者に対してたんぱく制限を意識した栄養管理が必要となるため、慢性腎臓病の患者ではよりサルコペニアさらには悪液質の患者が多いことが明らかになってきた。特に、心臓悪液質の患者は心臓悪液質ではない心不全患者と比較するとフレイルの有症率や低栄養のリスクも高く、単に生命予後のみが問題となるだけで無く、ADLやQOLなどの患者アウトカムにも直結する可能性が示された。心不全では病態的に腸管由来の血中エンドトキシン濃度上昇を招きやすく、悪液質を招く一因と考えられている。この点より、心不全患者のサルコペニアや悪液質には腸管との関連も結びつきが強いと考えられ、このメカニズムについてさらなる解明を行うことが悪液質の進行を防ぐためのアプローチに繋がる可能性が示唆される。エンドトキシンの主体となるリポ・ポリサッカライドは血液中のコレステロールと結合することによって、サイトカイン産生に関する活性化を抑制させる可能性がある。実際に、総コレステロール値が低値の心不全患者では予後不要であることが明らかとなっており、これら病態の関与が示唆される。この結果について、各学会のシンポジウムなどで公表を行い、意見交換と今後の可能性について議論を進めることが出来た。主な課題としては、これら患者に対して既存の栄養療法と運動療法では改善が困難であることも明らかとなったが、具体的な介入についてはさらなる模索が必要な状況である。
3: やや遅れている
当初の研究計画で想定していた基準に該当する患者が想定以上に少なく、また栄養診断基準の変更など、複数の点で見直しの必要が必要となったため。
基準の見直しを行い、組み入れ患者を増やすことが可能な観察研究も並行して遂行する。統計学的手法にプロペンシティマッチングスコアを用い、可能な限りRCTに研究の質を近づける工夫を行う。
研究対象者が予定より少ないため、介入用の栄養剤や血液検査の施行が当初の予定よりも少なくなったため、金額に余剰が生じた。次年度で検査、介入用の試料に費用を要する見込みである。
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