研究課題
心不全患者にはサルコペニアの患者にとどまらず、悪液質を合併した患者も非常に多い。その背景には、病態的に消耗性疾患として異化が亢進しやすい上に、腎機能障害を有する患者に対してたんぱく制限を意識した栄養管理が必要となるため、慢性腎臓病の患者ではよりサルコペニアさらには悪液質の患者が多いことが分かった。一方で、サルコペニアの診断基準と定義の見直しが繰り返され、新たなアジアのサルコペニアの診断には筋肉の質と量の両者の測定を必要とし、低骨格筋量、低筋力および低身体機能のすべてを認める場合は「重度サルコペニア」と定義することが加わった。心不全では病態的に腸管由来の血中エンドトキシン濃度上昇を招きやすく、悪液質を招く一因と考えられている。この点より、心不全患者のサルコペニアや悪液質には腸管との関連も結びつきが強いと考えられ、特に「重度サルコペニア」の患者が多くなることが予想される。心不全、腎機能障害を有する重度サルコペニアの患者に対してたんぱく質摂取を中心とした栄養療法は不可欠であるが、実際には安全なたんぱく質摂取量の設定や摂取方法は未だに解決ができていない。問題点として、心不全患者に多く認められる食欲不振や塩分制限による嗜好の問題で栄養摂取量が返って減少するなど、自宅における食事が安定しないことは研究遂行に困難を要する要因となっている。今後の課題として腎機能障害の進行に注意した効率的なたんぱく質摂取の方法の模索が具体的に必要である。
3: やや遅れている
当初の研究計画で想定していた基準に該当する患者が想定以上に少なく、また栄養診断基準やサルコペニア診断定義の変更など、複数の点で見直しの必要が必要となったため。
基準の見直しを行い、組み入れ患者を増やすことが可能な観察研究も並行して遂行する。統計学的手法にプロペンシティマッチングスコアを用い、可能な限りRCTに研究の質を近づける工夫を行う。
研究対象者が予定より少ないため、介入用の栄養剤や血液検査の施行が当初の予定よりも少なくなったため、金額に余剰が生じた。次年度で検査、介入用の試料に費用を要する見込みである。
すべて 2019
すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)