本研究では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)において、PAHの発症ならびに右心不全の発症には肺および冠動脈血管における炎症性内皮機能障害が関与しているという仮説を重症PAHモデル(SuHx)を用いて検証した。SuHxラットでは右冠動脈の血管機能低下がみられたが、エンドセリン受容体拮抗薬による治療により有意に改善した。また、CRISPR/Cas9の系で作成したIL-6ノックアウト(KO)ラットではSuHxモデルのPAH病態が著明に改善することを見出した。以上のことから、右心不全の発症には冠動脈の内皮機能障害が関与し、炎症シグナル阻害が難治性PAHに対する有望な新規治療法となる可能性が示唆された。
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