研究課題
拡張型心筋症(DCM)と拡張相肥大型心筋症(dHCM)は、類似した重症心不全の症状を示すが、突然死のリスクなどが異なり、治療方針の決定のためには両者の鑑別診断が不可欠である。本研究では、「DCMとdHCMを生体分子量により明確に区分し、確定診断に利用可能な新規バイオマーカーを確立すること」を目的として、左心室組織のエピゲノム解析(DNA メチル化)より見出したDCM/dHCM鑑別診断用のマーカー候補遺伝子について、個々のメチル化サイト(CpGサイト)のメチル化率を高精度・高感度に定量し、判別法を作成した。最終年度は、DCM/dHCMの比較で有意差のあった18個のCpGサイトについて、前年度未作成分を含めてパイロシークエンス法用のプライマーの設計を完了した。電気泳動による確認の結果、一部のプライマーでは標的配列の増幅が見られなかったため、充分な増幅が確認された標的のみを測定することとした。また、これらのCpGサイトの近傍に位置し、エピゲノム制御により発現が調節されている可能性の高い遺伝子のmRNAを定量するため、デジタルPCR用のプライマーを作成した。DCMおよびdHCMの患者の移植摘出心もしくは剖検心より抽出したDNA、RNA試料を用いて標的CpGサイトのメチル化率ならびに標的遺伝子のmRNA量の測定を実施した。一部のmRNAでは心筋組織での発現量が低値であったため、比較的発現量の多い標的mRNAのみを使用することとした。これらのデータを用いてDCMとdHCMが区別可能であるかをROC解析により評価した。その結果、CpGサイトのメチル化率の差DCM/dHCMでの差は想定異常に小さく、単独での区分は困難であることが明らかになった。そこで、複数のCpGサイトとmRNA発現情報より判別分析を行うことで、DCM/dHCMの区分が可能になると考えられた。
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Peptides
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10.1016/j.peptides.2018.08.006
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