研究実績の概要 |
悪性胸膜中皮腫はアスベスト曝露と密接に関連し,壁側胸膜の中皮細胞から発生する極めて予後不良の腫瘍である.今後わが国で増加すると予想されている悪性腫瘍のひとつである.しかしながら,悪性胸膜中皮腫に対する有効な治療法の確立は遅れている.近年明らかになってきた細胞のプログラム自死機構である『ネクロプトーシス』に注目し,進行悪性胸膜中皮腫の治療への応用可能性を検討した.既知のネクロプトーシス誘導を複数使用し,その誘導効率を比較検討した.TNF-α+IAP(アポトーシス阻害因子)阻害薬+Caspase阻害薬,の併用法が最も細胞死を誘導し,Necrostatin-1による細胞死阻害,RIPK1/RIPK3/MLKLのリン酸化蛋白の増加,および電子顕微鏡画像による形態確認,をもってネクロプトーシスを確認した.シスプラチン耐性,ペメトレキセド耐性,野生型の悪性胸膜中皮腫細胞株を使用し,ネクロプトーシスの誘導効率を検討したところ,シスプラチン耐性株で誘導効率が高いことが明らかとなった.シスプラチン耐性と関連することで知られるMDR1,MRP1,MRP2の発現レベルとネクロプトーシスの誘導効率との相関を検討したが,明らかな相関は示されなかった.
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