本研究計画では、3つの課題の達成を目標とした。 課題1:IL-17発現Kras変異肺がんマウスモデルを用いて、抗Ly6G抗体などによる好中球除去を介して、腫瘍環境にT細胞の浸潤が回復する機序を解析する=>IL-17高発現による好中球遊走が抗PD-1抗体への抵抗性に影響することを示し、肺がん患者の血清および手術検体を用いた解析でも同様の表現系を認めることを明らかにし、報告した。(Journal of Thoracic Oncology 2017 Aug;12(8):1268-1279)。 課題2:腫瘍関連好中球で特に発現が上昇しているArginase1が腫瘍環境中の浸潤T細胞に与える影響を評価する=>1において認めた活性化好中球によるTリンパ球の抑制に関わる因子としてArginase1に着目し、その抑制作用を確認した。阻害薬を用いたT細胞機能の改善効果などについて共同研究者であるAkbay研究員と論文報告した(J Immunother Cancer. 2019 Feb 6;7(1):32)。 課題3:抗PD-1抗体治療奏功例と非奏功例の患者からの治療前後の末梢血細胞を解析し、好中球による影響を評価する=>大阪大学医学部附属病院と刀根山病院にて、抗PD-1抗体治療を受けた患者から主に新鮮血を回収し、前向きに免疫学的プロファイルを行う観察研究を開始し、約80名の患者を治療が長期に維持できた症例と早期に次治療へ変更を余儀なくされた症例に分けて検討を進めた。末梢血中の好中球は治療効果に有意に影響していることが確認されており、好中球とTリンパ球の相互作用については現在も解析中。治療抗体の結合残存およびTリンパ球の評価系については、解析手法を確立し論文報告した(JCI Insight. 2018 Oct 4;3(19))。
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