研究課題
これまでの検討により線維細胞が腫瘍組織内において腫瘍進展や薬剤耐性に寄与し、またこの細胞はPD-L1を高発現することから腫瘍免疫にも影響を及ぼす可能性が示唆されたため、今回の検討を行った。まず初年度は線維細胞における各免疫チェックポイント分子の発現プロファイルを解析し、共抑制分子であるPD-L1以外に、共刺激分子であるCD54、CD86を高発現することが分かった。また線維細胞をヒト末梢血由来CD8陽性T細胞と共培養したところ、T細胞の増殖が著しく亢進し、これはCD54、CD86の阻害で抑制され、線維細胞はCD54、CD86を介してCD8陽性T細胞を活性化する可能性が示唆された。またC57BL/6マウス由来の肺癌細胞株である3LL、BALB/c由来中皮腫細胞株であるAB1-HAを同系統マウス皮下に移植することで肺癌/中皮腫マウスモデルを確立した。本年度は、まず線維細胞とCD8陽性T細胞の共培養の系においてPD-L1阻害によりT細胞の更なる活性化が生じるか検討したが、そのような効果が認められなかった。そこでヒト末梢血由来CD8陽性T細胞上のPD-1発現を検討したが発現は認めず、PD-L1阻害による効果が得られない一因と考えた。ヒト末梢血由来CD8陽性T細胞をIL-2で刺激するとPD-1発現が誘導され、IL-2存在下で線維細胞とCD8陽性T細胞を共培養するとT細胞の増殖は著しく抑制され、この効果はPD-L1阻害にてキャンセルされた。これらの結果から線維細胞は非活性化T細胞(ナイーブT細胞)の増殖をCD54、CD86を介して促進するが、活性化T細胞の増殖はPD-L1を介して抑制する可能性が示唆された。
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