研究課題/領域番号 |
17K16050
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
松尾 顕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 研究員 (50735074)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運命転換 / 幹細胞 / 肺癌 |
研究実績の概要 |
本研究は、分子標的薬耐性獲得時における肺腺癌から小細胞癌への組織型転換の分子機構の解明を目的とした。まず発生肺及び成体肺において、肺腺癌の起源細胞の一つであるClub細胞と小細胞癌の起源細胞である神経内分泌細胞の細胞系譜関係を評価した。この目的のために、Club細胞を特異的に標識するマウスを用いて、細胞系譜解析を行った。その結果、胎生13.5日目までのClub細胞は神経内分泌細胞に分化することが明らかになった。その分化能は発生が進んだ胎生14.5日目以降及び成体では消失していた。 肺の発生過程において、肺上皮前駆細胞から、非神経内分泌細胞(Club細胞含む)と神経内分泌細胞が分化する。この時、Notch signalが不活性化されることにより、肺上皮前駆細胞から、神経内分泌細胞が分化する。そこで、Notch signalの不活性化が、Club細胞から神経内分泌細胞への運命転換に関与しているか検証した。Notch signalが不活性化されたClub細胞の細胞系譜解析を行ったところ、胎生期及び成体期のClub細胞は、神経内分泌細胞へ運命転換した。この結果により、Notch signalの不活性化がClub細胞から神経内分泌細胞への運命転換をリプログラミングするのに重要であることが示唆された。 分子標的薬耐性獲得時における肺腺癌から小細胞癌への組織型転換の分子機構を解析するために、肺腺癌から小細胞癌への運命転換を検証するモデルマウス作製を試みた。肺腺癌から小細胞癌への組織型転換癌において、不活性化されている遺伝子を、同様に肺腺癌モデルマウスのClub細胞で不活性化し、その細胞系譜を解析した。その結果、神経内分泌細胞へ運命転換したClub細胞の子孫細胞を見出した。その一部は、過形成(hyperplasia)を起こしていた。現在、組織型転換癌への発癌及び進展を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究により、発生肺及び成体肺におけるClub細胞から神経内分泌細胞の運命転換の分子機構は、Notch signalの不活性化により、Club細胞から神経内分泌細胞へ運命転換がリプログラミングされたことが実証できた。今後、この知見を土台として、肺腺癌から小細胞癌への組織型転換の分子機構解明につながることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肺腺癌モデルマウスを用いて、本研究で明らかにしたNotch signalの不活性化によるClub細胞の運命転換が、肺腺癌から小細胞癌への組織型転換を引き起こすか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の3月に、情報収集のために国際学会に参加をした。この経費が、為替レートの変動により、当初予定した予算より、少なく済んだために、次年度使用額が生じた。
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