研究課題
本研究は、分子標的薬耐性獲得時における肺腺癌から小細胞癌への組織型転換の分子機構の解明を目的とした。これまでに、発生肺及び成体肺において、Notch signalの不活性化が、Club細胞(肺腺癌の起源細胞の一つ)から神経内分泌細胞(小細胞癌の起源細胞)の運命転換を制御していることを見出した。さらに、肺腺癌から小細胞癌への組織型転換の分子機構を解析することを目的として、肺腺癌(もしくはClub細胞)から神経内分泌細胞及び小細胞癌への運命転換モデルマウスを作製し、その細胞系譜を解析した。その結果、肺腺癌(もしくはClub細胞)が神経内分泌細胞へ運命転換していた。さらに、その一部は、過形成(hyperplasia)を起こしていた。そこで、本年度(平成30年度)では、肺腺癌から小細胞癌への運命転換を解析することを目的として、 運命転換モデルマウスを用いて、発癌過程を長期的に解析した。その結果、報告されていた遺伝子では、肺腺癌から小細胞癌への運命転換を示唆する結果は得られなかった。したがって、肺腺癌の運命転換には、さらなる転換促進因子の関与を考えた。現在、その因子の同定を試みている。今回の研究により、発生及び肺腺癌におけるClub細胞から神経内分泌細胞への運命転換の分子機構の一端が明らかになった。そして、肺腺癌から小細胞癌への運命転換には、複数の運命転換制御因子の関与が示唆された。さらに、本研究で作製した発生及び発癌におけるClub細胞の運命転換マウスと新規の運命転換因子を組み合わせたマウスにより、運命転換細胞の細胞系譜追跡及び次世シーケンスを用いた運命転換細胞の遺伝子発現解析が可能となる。今後、分子標的薬耐性獲得時における肺腺癌から小細胞癌への組織型転換の分子機構解明が推進されることが期待される。
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