研究実績の概要 |
SOPten△/△マウスのE18.5の段階で肺上皮細胞を単離し、DNAマイクロアレイ解析を行った。SOPten△/△マウスの肺上皮では、細気管支前駆細胞、肺胞前駆細胞、神経内分泌細胞、Club細胞、杯細胞、Ⅰ型AECのマーカー遺伝子発現が亢進し、Ⅱ型AECの発現が減少すること、Notchシグナルの発現が亢進し、紡錘体形成に関与するCenpE、Shugoshin、Bub1の発現が減少することを見出した。E18.5マウス肺組織の免疫染色では、DNAマイクロアレイの結果と一致し、SOPten△/△マウス肺で神経内分泌細胞、Club細胞、杯細胞、Ⅰ型AECが増加し、Ⅱ型AECと線毛上皮細胞が減少していた。 哺乳類の正常な胚発生のためには、1.適切な細胞運命決定(Development, 2014)、2.「プログラムされた細胞老化」(Cell, 2013)が重要である。肺発生時の上皮幹細胞・前駆細胞の分化におけるPtenの機能解析の報告はない。一方、「プログラムされた細胞老化」とは、細胞傷害やストレスに非依存性に、制御下に特定領域の細胞老化が生じ、免疫細胞浸潤によって老化細胞が取り除かれ、正常胚発生過程において組織リモデリングが生じるものである。E18.5 SOPten△/△マウスの肺胞領域ではアポトーシス細胞数は対照群と差がない一方、細胞増殖マーカー陽性細胞数は著明に減少していた。これまでの研究実績と予備実験の結果を元に、本研究は、doxycyclineとrtTAの細胞毒性の関与の懸念が不要であるSHHGFPCre/Pten△/△マウスとSHHCreERT2/Pten△/△マウスを用い、肺上皮Ptenの機能を網羅的に解析した。
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