研究課題
deltaNp63(+)/TTF-1(+)の表現型を示す細胞をヒト末梢肺組織より分離培養しHuman Lung (HuL)細胞と命名した。2次元培養系におけるHuL細胞は未熟な細気管支基底細胞様の細胞である。本研究では3次元培養系やマウス肺への移植実験を通じてHuL細胞が末梢肺上皮幹細胞であることを証明することを目指し、将来的に呼吸器領域に細胞治療を導入するための基礎データとすることを目的とした。初年度はMatrigelを使用した3次元培養系を確立した。細気管支への分化を促す培養条件においては嚢胞壁は多層性の壁構造を呈しapical面には多数の線毛が観察され、SP-Aの発現はみられなかった。一方肺胞上皮への分化を促す条件の場合、嚢胞壁は菲薄化しほぼ単層性となった。嚢胞壁を構成する一部の細胞には細胞質にSP-Aが確認されSP-Aはapical面全体を覆っていた。それぞれの条件におけるmRNAの発現解析でも矛盾しない結果が得られ、HuL細胞の細気管支粘膜上皮及び肺胞上皮にも分化する多分化能を確認した。またHuL細胞が培養系により“誘導”されたものではなく、生理的に肺内に存在する細胞が“選択”され増殖してきたものであることを明確に証明するため、ヒト肺組織における免疫蛍光二重染色を行った。それによりdeltaNp63(+)/TTF-1(+)の表現型を示す細胞がヒト肺組織内にも存在することを確認できた。最終年度はBleomycin肺傷害マウスを使用しHuL細胞の生着・分化実験を行った。経気道的に投与したHuL細胞は脱落した肺胞上皮を置換するように生着し繊毛細胞や粘液細胞への分化を認め、また一部の細胞はSP-Aを発現しており、2型肺胞上皮への分化を示す細胞も一部ながら存在した。HuL細胞は末梢肺組織の上皮細胞を再生しうる上皮幹細胞であり、将来的に再生治療に使用しうる細胞と期待される。
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Experimental Cell Research
巻: 372(2) ページ: 141-149
10.1016/j.yexcr.2018.09.020