研究課題/領域番号 |
17K16055
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
三浦 陽子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (60563517)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 線維化 / モデルマウス / 間質性肺炎 / 関節リウマチ |
研究実績の概要 |
新規のIP誘導モデルであるBiCIP法は、ブレオマイシンの気管支投与法を改良した方法で、線維化を伴う慢性のIPを誘導する。本研究では、この手法を用いて①BiCIP肺における組織学的特徴 (線維化率、炎症率、増殖率)を明らかにし (平成29~30年度)、②BiCIP肺に抗線維化剤ニンテダニブの連続経口投与を行い、治療効果を検討する (平成30~31年度)。平成30年度は、①のIPの発症過程の組織学的特徴の可視化および、②BiCIP肺における抗線維化剤ニンテダニブの治療効果を検討した。1) 病理組織像の作成および、線維化の病理評価、2) 間葉系細胞による線維化率、3) 炎症系細胞の浸潤率 (炎症率)および4) fibroblastおよびII型肺胞細胞の増殖率等の項目で評価を行った。 平成30年度までに、D1CC x D1BCマウスを用いて、BiCIP法により肺炎の誘導を行った。肺炎の誘導後、2週目の肺において多数の炎症細胞の浸潤が確認された。BiCIP法により誘導した肺炎は、2週目にNon-specific interstitial pneumonia (NSIP) を示した後、14週にかけてUIPを示すことが示唆された。線維化はMasson’s trichrome stainingおよび、コラーゲンIの免疫染色により、線維の陽性領域を規定し、肺における線維化率を計算した。この計算方法により、本誘導法を用いた線維化は二峰性を示すことが明らかとなった。しかし、細胞の増殖は炎症誘導後2週 (急性期)、14週 (慢性期) で肺炎未誘導と比べて非常に少なかった。現在はこのような症状を示すモデルを用いて、ニンテダニブの連続経口投与による線維化抑制効果を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、①のIPの発症過程の組織学的特徴の可視化および、②BiCIP肺における抗線維化剤ニンテダニブの治療効果を検討した。 ①の組織学的特徴の可視化に関しては、BiCIP法により、D1CC x D1BCマウスの肺で2週目にNSIPを示した後、14週にかけてUIPを示すことが明らかとなった。線維化率に関しては、Masson’s trichrome stainingおよび、コラーゲンIの免疫染色から算出した。好中球、リンパ球、マクロファージの免疫染色を行い、炎症系細胞の浸潤率を算出した。細胞の増殖率は、Ki67の染色により算出した。 ②抗線維化剤ニンテダニブの治療効果に関しては、マウスから肺を採取し、ブロック作成を行った。現在は病理染色および、免疫組織学的染色を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度に引き続き、②BiCIP肺における抗線維化剤ニンテダニブの治療効果を検討することを進める。平成29、30年度の結果から、本誘導法は既存の誘導法では観察できなかったハニカム構造を伴う慢性間質性肺炎を観察することが可能であった。平成31年度は引き続き、ニンテダニブの抗線維化効果の検討を行う予定である。 BiCIP法により誘導した肺炎は、IPF患者の病態を強く反映している可能性が示唆される。現在、間質性肺炎の分類は多様であるが、その診断はCTによる画像解析が中心であり、VATs検体を採取しても免疫組織学的染色等は殆ど行われていない。そのため、間質性肺炎の分類ごとの特徴は不明点が多い。本研究におけるBiCIP法で誘導した肺炎の解析は、間質性肺炎の中でもIPFにおける組織の特徴の解明に加え、間質性肺炎の発症のメカニズム解明にも寄与すると考えられる。さらに、平成31年度はBiCIP法により作成したIPFモデルで既存薬のニンテダニブの効果を検討する予定である。ニンテダニブの作用が線維化のみならず、他の因子も抑制している可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実験状況により繰越額が生じた。繰越額は次年度に繰越しして消耗品、試薬費等として充てる予定である。
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