研究課題/領域番号 |
17K16063
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中鉢 正太郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (90464867)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肺癌 / 肺気腫 / COPD |
研究実績の概要 |
肺癌と慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は世界の主たる死因であり、喫煙はこの両者の主要な危険因子として知られている。肺気腫は不可逆的であり、またCOPD患者において肺癌発症のリスクを上昇させる。喫煙による発癌と気腫発生の双方に関わる機序は未解明であり、肺癌と肺気腫の両病態を同時に評価可能な動物モデルは存在しなかった。そこで我々は、A/Jマウスに対してタバコ煙中の主要な発癌誘導物質である4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone (NNK)を投与後にタバコ煙曝露を行い、喫煙誘導性に肺癌と肺気腫が生じるモデルを作製した。またタバコ煙曝露の総量と総期間を同一にしたうえで、曝露パターンを変化させることにより、肺腫瘍形成と肺気腫形成の程度に影響が及ぶかを検討した。 その結果、3か月間のタバコ煙連続曝露により、NNKにより誘導された肺腺腫と肺腺癌の形成は抑制された一方、肺気腫は進行した。次に1か月おきに3か月間曝露を実施した間歇曝露群では、3か月間の連続曝露群に比し、肺腺癌の形成が促進し、肺気腫も進行した。また1か月おきに3か月間曝露を実施した間歇曝露群をさらに4か月間禁煙状態で飼育し、喫煙曝露前・5か月経過時点・9カ月経過時点におけるマイクロCTを撮影し、5か月経過時点で形成された腫瘍が4か月の経過観察期間に増大することを確認した。 タバコ煙曝露を間歇的に繰り返すプロトコルを用いることで、NNK投与後A/Jマウスの肺癌と肺気腫の形成は促進した。本研究結果は直ちにヒトの喫煙行動パターンを模したものとはいえないが、気腫を背景肺とした肺癌の病態生理ならびに治療の検討に有用な動物モデルを供するものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
喫煙曝露を断続的に行うことにより高率に肺癌・肺気腫を発生させることができるモデルマウスを確立した。肺気腫と肺癌の両者が断続喫煙で悪化するため、両者に共通する病態があるだろうとことが推察できる結果であった。以上から順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍の免疫染色等により腫瘍の性質 (M2マクロファージの浸潤や、腫瘍の発生期限)、全肺のPCR等、気管支肺胞洗浄液 (BALF)の炎症細胞の分画やELISAなどにより①非喫煙群、②連続喫煙群、③間歇喫煙群の差異を検討する。 上記を検討することにより、肺癌と肺気腫の共通の病態、将来の両者の化学予防の候補薬の選定につなげたい。
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