研究課題/領域番号 |
17K16066
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
吉田 光範 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 研究員 (70772630)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺MAC症 / 疾患感受性遺伝子 / ケース・コントロール関連解析 |
研究実績の概要 |
肺Mycobacterium avium complex (MAC)症は本邦において近年増加が著しい慢性抗酸菌感染症であるが、病態機構は解明されておらず、現時点で有効な治療法も確立されていない。本研究は、日本人集団の肺MAC症疾患感受性遺伝子を網羅的に探索し、肺MAC症の病態機構を明らかにすることを目的とした。具体的には、1)日本人肺MAC症患者のケース・コントロール関連解析から新規の肺MAC症疾患感受性遺伝子を検出すること、2)培養細胞および哺乳類の生体内において、新規の疾患感受性遺伝子がMACの殺菌機構に関与していることを証明することである。予備的に行った日本人肺MAC症患者のケース・コントロール関連解析およびimputation解析から、16番染色体領域に肺MAC症の発症に有意に関連する新たなSNPが見出された。本年度はまず、ケース・コントロール関連解析に使用した試料とは独立の日本人肺MAC患者集団のDNAを収集し、DigiTag2法による再現解析を行った。その結果、4つのSNPについて、再現性が確認された。GTEx portalデータベースより、当該SNPは肺組織においてA遺伝子の発現量と相関しており、リスクアリルをホモで持つ個体ではA遺伝子の発現量が低下している傾向にあることが分かっている。 次に、宿主細胞のMAC感染におけるA遺伝子の発現変化を調べるために、A549細胞株およびTHP-1細胞株をPMAにより分化させたマクロファージに対して、MAC標準株(104株またはTH135株)を感染させ、数時間インキュベーションさせたのちに、MAC感染細胞および対照とするMAC非感染細胞をそれぞれ回収し、リアルタイムPCR法によるA遺伝子のmRNAレベルの定量化を試みた。現在、上記実験の感染時間および接種菌量の条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最大の目標は、DigiTag2法による再現解析を達成することであった。実施したDigiTag2法によって、予備的に行ったケース・コントロール関連解析の再現性が確認され、さらには感染実験の条件検討を十分に行うことができた。以上の理由により、研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
A遺伝子が細胞内におけるMACの殺菌にとって重要であることを証明する。 今後の研究の推進方策として、まず、リアルタイムPCR法による、MAC感染時におけるA遺伝子のmRNAレベルの定量化を行う。最低繰り返し3回のデータをとり、統計解析をおこない、有意差を検出する。次に、化学合成したshRNAによりA遺伝子の発現を抑制したA549細胞株、およびTHP-1細胞株の樹立を試みる。その後、染色体上にGFPを導入したMAC 104株またはTH135株を感染させて数時間インキュベーションする。継時的に、siRNA処理細胞および対照となるsiRNA非処理細胞をそれぞれ回収し、フローサイトメトリー法により細胞内のMAC菌数を計測して比較する。 また、A遺伝子をノックアウトした遺伝子改変マウスを作成が完了次第、動物実験を開始する。具体的には、C57BL/6マウスおよび作成したC57BL/6背景の遺伝子改変マウスに対して、107 CFUのMACを気管挿管により肺に感染させる。統計的解析を行うために、一群あたり10-12匹のマウスを使用する。マウスは感染後10日毎に殺処分し、肺組織のホモジネートを連続希釈して7H10培地に塗布する。2-3週間後に菌量をCFUの形で測定し、両者を比較する。また、感染後7日毎に体重測定を行い、時間経過に伴う体重変化および生存時間解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入予定であった超低温フリーザ― VT-78について、搬入場所の検討が必要になったことから、本年度は購入を見送ったため。また、消耗品費が当初の予定を下回ったため。来年度は、超低温フリーザーに加えて、当初の計画通りに使用する予定である。
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