研究実績の概要 |
本研究では、肺非結核性抗酸菌症患者(肺NTM症)と気管支拡張症患者(BE症)におけるフレイルの差およびバイオマーカーの発現状況を比較検討した。 2017年10月から2020年5月31日まで肺NTM症疑いの患者を前向きに症例集積し、気管支鏡検査の結果に応じて、33名が肺NTM症、36名がBE症に振り分けられた。肺NTM症患者とBE症患者のBAL液および血清で抗菌ペプチド(hCAP/LL-37)、肺サーファクタントプロテインA, D(SP-A, SP-D)の測定を行なった。またフレイルの評価のため、基本チェックリスト(KCQ)およびHADS質問票を用いて、各患者のフレイルの評価を行なった。結果は、KCQとHADSのいずれの質問票においてもBE患者と比較して、肺NTM患者は有意にスコアが低く、フレイルな状態であることが判明した。BAL液中のhCAP/LL-37とSP-Dは肺NTM症患者で有意に高値であった。一方で、血清のhCAP/LL-37は肺NTM症患者で有意に低値であることが判明した。これらの結果から、気管支鏡検査で診断を行うような軽症の肺NTM症患者においても、診断時点で既にfrailな状態であることが判明した。バイオマーカーの解析では肺NTM症患者は全身よりも肺局所での炎症がより強く出ていることが明らかになった。この研究は論文として下記の通り発表を行なった。
Fujita K, Ito Y, Yamamoto Y, et al. Comparison of frailty in patients with nontuberculous mycobacterial lung disease and bronchiectasis: a prospective cohort study. BMC Pulm Med. 2022 Nov 3;22(1):395.
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