研究課題/領域番号 |
17K16070
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平川 陽亮 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10780736)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 低酸素 / りん光 |
研究実績の概要 |
申請者は慢性腎臓病の低酸素描出の手法としてりん光イメージング顕微鏡とりん光プローブBTPDM1を用いたものを開発し、生体マウスでの腎尿細管細胞の酸素分圧を空間解像度をもって描出することを目指している。申請者はBTPDM1を使用したりん光イメージング顕微鏡にて腎臓の尿細管の描出が可能で、また尿細管内に酸素勾配が存在することを示し、さらに尿細管のうちより上流に位置するS1セグメントは下流に位置するS2セグメントよりも酸素分圧が高いことを示した。また、培養細胞を用いたりん光寿命と酸素分圧の検量線を使用することにより、生体内の腎尿細管細胞の酸素分圧を定量化することに成功し、軽微な低酸素刺激である15%酸素吸入によっても生体内では尿細管細胞の低酸素が生じてることを明らかにした。一方、本手法を用いて慢性腎臓病の低酸素を描出するには問題点もあることが明らかとなった。具体的には計画書で予定していた糖尿病性腎臓病モデル及び片側尿管結紮モデルといった、一般的な慢性腎臓病モデルではプローブ分布の変化や、りん光寿命が過延長することが認められており、本手法により慢性腎臓病モデルの腎臓の酸素分圧を定量化するためにはさらなる改良が必要であることが明らかになった。 これらの成果は国際的な学術雑誌であるKidney International誌に投稿、受理されるとともに、2018年のアジア太平洋腎臓学会に発表済、日本腎臓学会及び欧州腎臓学会での発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に当初予定した手法の確立を終え、学会発表及び論文投稿を終えている。一方、疾患モデルにおける評価法の確立が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画で予定した実験のうち、正常マウスにおける酸素分圧測定は完遂されているが、疾患モデルにおける低酸素描出が十分ではない。現在使用しているBTPDM1は細胞内分布性のりん光プローブで、細胞内酸素分圧の測定には適しているが、疾患モデルでは細胞内分布性りん光プローブの使用が適していない可能性を考えており、りん光プローブを代えることで慢性腎臓病モデルの酸素状態の評価が可能ではないかと考えている。このため、複数のりん光プローブを使用し、評価に適したプローブを模索していく。
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