研究実績の概要 |
本研究は、慢性腎臓病の進行に深く関わる因子である腎臓の尿細管低酸素の新たな検出方法を検討した研究である。申請者はこれまでの研究で、りん光色素であるBTPDM1を用いて腎臓の酸素状態を定量的に評価する方法を確立した(Hirakawa Y, Sci Rep 2015)。この方法を発展させ、りん光寿命イメージング顕微法(PLIM)を用い、BTPDM1を使用して腎表面の尿細管における酸素状態の評価を行った。この手法を確立し、腎表面の酸素状態を可視化したところ、腎表面には異なる二つの酸素状態を呈する尿細管群があり、これらが近位尿細管S1セグメント及びS2セグメントであることが示された。これらのセグメントの酸素分圧を定量することも可能となった。腎臓における酸素状態を評価する手法において、尿細管セグメントレベルの解像度を有する手法はなく、本手法により腎臓の酸素状態のより精緻な評価を行うことで、腎臓低酸素の発生様式と分子生物学的な意義を検討する上で重要であると考えられた。本研究の成果は国内・国際学会報告を行うとともに、論文報告が行われた(Kidney Int. 2018;93:1483-1489)。また、水溶性りん光プローブを用いた検討についても報告を行っている(Royal Society of Chemistry, 2018, Chap. 4, pp.71-90. DOI: 10.1039/9781788013451)。さらに、申請者はこの研究にて得られた知見を元に総説を複数記載している(J Photochem. Photobiol. C. 2017;30;71-95, Front Physiol. 2017;8:99)。
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