研究課題
ADAMTS13は止血因子であるvon Willebrand因子(VWF)の特異的切断酵素であり、ヒトでは、この酵素が先天的あるいは後天的に欠損することで血栓性微小血管症(TMA)病態を呈する。本研究はADAMTS13遺伝子の全身性遺伝子ノックアウトマウスを用いて、全身のADAMTS13 機能不全がTMAにおける腎障害の発症・進展にどの程度関与するのかという点を明らかにすることを一つの目的としている。H29年度は、ADAMTS13KOマウスを用いた腎障害モデルの作成と評価、さらにTMAモデルマウスの作成を中心に研究を実施した。ADAMTS13KOマウスとWTマウスを用いて、5/6腎摘という手法により進行性腎障害モデルを作成したが、ADAMTS13KOマウスとWTマウスでは収縮期血圧やBUN、Cr、アルブミン尿に有意な差を認めなかった。またHEやPAS、MT染色による糸球体硬化や間質の繊維化などの腎組織の評価でも両群に差を認めなかった。このことから、全身のADAMTS13欠損単独では5/6腎摘による腎障害の進展に影響を与える可能性が低いことが予測された。TMAモデルマウスの作成に際しては、現在、ヘモグロビンの低下やBUNの上昇、さらには腎組織においてVWF抗体で染色される血栓を形成するような新規モデルを確立しつつある。H30年度も引き続き、本TMAモデルの樹立を進めるとともに、モデルが出来次第、腎臓の形態学的変化や腎臓から抽出したVWFの特性解析(高い血小板凝集能を持つ超高分子量VWF重合体か否かなど)を行う。
2: おおむね順調に進展している
TMAモデルマウスの作成に多少時間を要しているが、新規TMAモデルの樹立が期待される結果が得られている。モデルが樹立した暁には、ADAMTS13KOマウスの新たな特性が明らかになるとともに、本研究の目的であるADAMTS13機能不全が腎障害の発症・進展に与える影響を解析することが可能になりうると考える。
引き続きADAMTS13KOマウスを用いて新規TMAモデルマウスの樹立に向け、研究を推進する。本TMAモデルの特性を明らかにするためにも、腎臓だけでなく全身の諸臓器における血栓の有無を確認し、どの臓器の障害が顕著であるかも確認する。これと並行して、マウスの腎動脈に塩化鉄傷害による血栓形成負荷を与え、腎臓に直接的に血栓を形成させて腎臓の形態学的変化、VWFの動態を解析することも考えている。
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