研究課題
KLHL3ノックアウトマウスの作成と解析。KLHL3の遺伝子改変を行ったES細胞を用いて、KLHL3プロモーター下にβ-galactosidaseを発現するKLHL3 KOマウスを作成した。このマウスを用いてKLHL3 は腎臓以外にも脳など複数の臓器に発現していることを明らかとした。KLHL3 KOマウスの腎臓ではWNK1とWNK4の上昇を認め、高血圧など偽性低アルドステロン症2型(PHA2)の表現系を示した。しかしながら、腎臓以外の臓器ではWNKキナーゼの上昇は認められず、腎臓以外の表現系も認められなかった。また、変異KLHL3によって起こるPHA2は変異KLHL3のドミナントネガティブ効果であることを明らかとした(Mol Cell Biol 2017)。KLHL2ノックアウトマウスの作成と解析。CRISPR/Cas9システムを用いてKLHL2ノックアウトマウスを作成した。KLHL2はKLHL3と高い相同性を持つにもかかわらず、KLHL2 KOマウスは、PHA2の表現系を示さなかった。KLHL2の発現部位が腎髄質優位であり、NCCの発現部位である遠位尿細管での発現が少ないためであると考えられた (Biochem Biophys Res Commun. 2017)。また、慢性腎臓病の治療薬に関する研究も行った。血液疾患の治療で使用されるプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブをアリストロキア酸による薬剤性腎障害マウスモデルに投与したところ、腎臓における線維化、炎症、アポートシスに関わるマーカーの改善及び、血清クレアチニンや腎組織所見の増悪の抑制が認められ、新たな腎障害治療薬となる可能性を示した(Sci Rep. 2017)。
2: おおむね順調に進展している
KLHL2 KOマウス及びKLHL3ノックアウトマウスについてはすでに作成ずみで、腎臓における機能解析を行い、論文発表を行った。KLHL2及びKLHL3のノックアウトマウスにおける腎臓以外の臓器では、比較的発現量の多い脳においてもWNKキナーゼの発現量に変化が認められず、明らかな表現系も認められなかった。KLHL3蛋白のWNK以外の基質の解析については、KLHL3ノックアウトマウスを持ちいて、質量分析を行った。この結果から得られた候補タンパクについて今後解析を行っていく。
KLHL2及びKLHL3それぞれ単独のノックアウトマウスについてはほぼ解析を終えたので、今後はKLHL2/KLHL3のダブルノックアウトマウスの作成及び機能解析を行う。KLHL2とKLHL3は高い相同性を有している、その高い相同性のため互いに機能を代償していること予想される。KLHL2及びKLHL3のそれぞれ単独のノックアウトマウスでは腎臓以外の表現系に乏しい結果であったが、ダブルノックアウトマウスの、機能解析を行うことで腎臓以外の臓器・組織でのKLHL2とKLHL3の働きを明らかとする。KLHL3ノックアウトマウスを利用した質量分析結果について解析を行う。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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