研究課題
オステオクリン(OSTN)の腎疾患ならびに骨・骨格筋との臓器連関(骨腎連関、筋腎連関)における意義を解明する目的で、H29年度においてはマウス・ヒトのELISAによるOSTN測定系の確立し、測定を行った。血中に存在すると想定されているマウスOstn(80-130)あるいはヒトOSTN(83-133)のC端をそれぞれ認識するウサギポリクローナル抗体(研究協力者より供与)と両者のN端を共通して認識するラットモノクローナル抗体(R&D社)の組合せでマウス用あるいはヒト用のサンドイッチCLEIA(化学発光酵素免疫測定法)を作成した。研究協力者が開発したSAP-Ostnトランスジェニックマウス(ヒトアミロイド蛋白Pプロモーター下に全長マウスOstnを発現し、血中濃度が顕著に上昇)の血中濃度を測定したところ、野生型マウスは測定感度下限であったのに対し、Ostnのコピー数が少ないline33の血中濃度は1.2 ng/mLで、コピー数の多いline 51は52.2 ng/mLと上昇していた(Kanai et al. J Clin Invest 2017)。また、京都大学医学部附属病院に設置された医の倫理委員会の承認を得(申請番号G774)、慢性腎臓病患者の血漿を用いてOSTN血中濃度を測定している。平成30年4月1日時点で59検体を測定しており、CKDステージ毎に群分けすると、腎機能が高度に進行したstage4 (eGFR 15-30 mL/min/m2)、stage5 (eGFR <15)における血中濃度は腎機能が保たれたstage1 (eGFR >90)に比べ有意に血中濃度が低下していた。低下の原因を評価するためアデニン投与によるマウス腎不全モデルを作成したところ、骨や骨格筋におけるOstn発現が低下していた。
2: おおむね順調に進展している
研究協力者との共同研究により、予定していたマウスおよびヒトOSTN測定系に成功し、マウスおよびヒトの血中濃度を行った。マウスにおいては野生型マウスにおいては感度不足のため測定できなかったため、血中濃度が高度に上昇したSAP-Ostnトランスジェニックマウスにおいて定量を行った。ヒトに関しては、慢性腎臓病患者における血中濃度測定に成功し、腎機能障害が進行すると血中濃度が有意に低下することを見いだした。上記のように、当初の研究計画通りに進捗している。
慢性腎臓病患者の血中濃度測定を続け、慢性腎臓病におけるOSTNの重要性を明らかにする。現時点で明らかとなった腎機能以外の相関因子についても探索する。慢性腎障害におけるOSTNの意義について検討するために、血中濃度が高度に上昇したSAP-OstnトランスジェニックマウスもしくはOSTNの受容体であるNpr3ノックアウトマウスを研究協力者より入手した。腎機能障害は腎間質の線維化と並行して進行するため、線維化モデルである片側尿管結紮モデルを施行し、障害後の異なる時点での変化について評価する(着手済)。OSTNの細胞レベルの機能については、Npr3(NPR-C)の発現は足細胞に多いため当初の計画は足細胞株を用いた検討を予定していたが、腎機能障害の低下とOSTNの機能の関係にあらたに着目することにした。線維化に注目しているため、線維芽細胞株や上皮細胞株に対するOSTNやOSTNによりシグナルが増強するとされているCNPの添加を行って炎症関連もしくは線維化関連遺伝子の変化を評価する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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