研究実績の概要 |
オステオクリン(Ostn)はナトリウム利尿ペプチド(NP)のクリアランス受容体Npr3の特異的なリガンドで、骨や骨格筋で発現・分泌される。OstnはNpr3に競合的結合することで、NPの作用を増強すると想定されている。慢性腎臓病(CKD)ではOstn発現が変化し腎障害に関与すると仮説を立て以下の検討を行った。 1) Ostnの測定系の確立:自作抗体(国立循環器病研究センター望月直樹先生、南野先生から供与)と市販抗体(R&D社)の組み合わせて、化学発光酵素免疫測定系(CLEIA)を確立した。 1a) ヒト検体の測定:非透析導入CKD患者(京大病院医の倫理委員会承認)における血中Ostn濃度の測定を行ったところ、年齢と弱い負の相関を(R2=0.142, P<0.0001)、eGFRと弱い正の相関を示した(R2=0.0432, P=0.0368)。さらに、Ostn低値群(<12.5 pg/mL)は高値群(≧45 pg/mL)と比較し優位に高齢であり(それぞれ、P=0.0005)、血中Ostn濃度には加齢による影響が大きいと推察された(論文準備中)。 1b) マウス検体の測定:野生型マウスの血中濃度は測定感度未満(<50pg/mL)であったが、Ostn過剰発現マウス(SAP-Ostn-Tg)の血中濃度は52ng/mLと著明に上昇していることを検出した(Kanai, et al. JCI 2017)。 2) 遺伝子改変マウスを用いた腎障害への影響の評価:Ostn-TgおよびNpr3のノックアウトマウス(Matsukawa, et al. PNAS 1999)に対し腎線維化モデルである片側尿管結紮(UUO)を施し腎障害を検討したところ、Ostn-TgはWTマウスと比較し線維化の程度に変化はなく、Npr3-KOは線維化が悪化することを確認した(論文準備中)。
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