研究課題
長期腹膜透析の合併症である腹膜線維化を軽減するために、心臓や肺・肝臓・腎臓などの多くの臓器で線維化に関与するConnective tissue growth factor (CTGF)CTGFに着目した。CTGFは病的な状態においてTGF-βなど他の増殖因子の機能を調節し、細胞外基質増加作用や炎症を惹起するなど様々な機能を有する増殖因子であり、そのノックアウトマウスは生後間もなく死亡する。そのため、我々はCTGFコンディショナルノックアウトマウス(Rosa-CTGF cKO)を作成し、成人におけるCTGF抑制の検討を行ってきた。今回Rosa-CTGF cKOを用いて腹膜線維化におけるCTGF抑制の治療効果の検討を行った。腹膜線維化を惹起すると、腹膜肥厚や炎症細胞浸潤・血管新生が生じ、腹膜透過性の亢進が生じが、Rosa-CTGF cKOでは腹膜肥厚が改善した。また、aSMA陽性細胞やKi67陽性細胞数が減少しており、腹膜における線維芽細胞の増殖が軽減していた。また、炎症細胞集簇に加えCD31陽性血管数も減少していた。腹膜におけるmRNA発現においても、Rosa-CTGF cKOでは線維化・炎症・血管新生マーカーの有意な改善を認めた。腹膜平衡機能検査においても、Rosa-CTGF cKOでは腹膜線維化にともなう腹膜劣化を意味する透過性亢進が優位に軽減していた。また、ヒトの腹膜透析導入前・離脱後の腹膜のCTGF染色を行い、ヒトにおける腹膜線維症でのCTGFの発現を確認した。
2: おおむね順調に進展している
Rosa-CTGF cKOマウスでの腹膜線維症の解析は終了し、順調に進行している。
尿毒症における腹膜変化にCTGFが関与するかの検討を行うために、10週齢のコントロールマウスとRosa-CTGF cKOマウスにアデニン飼料4週間与え、腎不全モデルの作成を行う。これらのマウスの腎臓・前腹壁組織を採取する。腎不全発症に対するCTGF抑制効果の検討を腎臓のMasson-Trichrome染色で線維化の評価を行うとともに、採血で腎障害を評価し、血中CTGF濃度の測定を行う。腹膜に関しては、腹膜肥厚の有無や炎症細胞浸潤、CTGF発現の検討を免疫染色、Real time PCRを用いて行う。また、内頚動脈を採取し尿毒症に伴う血管内膜肥厚がCTGF抑制で改善するかの検討を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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