高齢者腎臓病の予後不良因子、三次リンパ組織を検出する新規バイオマーカーの開発

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17K16081
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 佐藤 有紀 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (60762086)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 急性腎障害 / 三次リンパ組織 / 慢性炎症

研究実績の概要

三次リンパ組織の多様性を明らかにすることがバイオマーカー開発に必須であることから、独自に開発したマウスモデルの解析と外科的に切除された高齢者（60歳以上）腎細胞癌69症例の背景腎臓と、腎盂腎炎16症例の組織解析を行い、腎障害と三次リンパ組織の多様性の関係性を検討しました。
高齢マウスに腎障害を引き起こすと、三次リンパ組織は障害後慢性期から腎臓内に誘導され始め、その後次第に拡大すると共に質的な成熟を果たします。三次リンパ組織は最初T細胞とB細胞が明瞭な区別なく混在した集合体として発生し（stage 1 三次リンパ組織）、その後内部に濾胞状樹状細胞が誘導され、その領域と一致してB細胞領域が形成されます（stage 2 三次リンパ組織）。さらに時間が経過すると一部のB細胞領域内に胚中心反応が観察されるようになります（stage 3 三次リンパ組織）。軽度腎障害では未熟な段階で三次リンパ組織の成熟停止が起きるのに対して、重篤な腎障害では成熟度の高い三次リンパ組織まで誘導され、免疫抑制剤による介入によりステージが低下することも明らかにしました。
ヒト腎盂腎炎においても、組織障害が重篤な部分ではより成熟度の高い三次リンパ組織が認められる一方で、障害が軽度な部位では三次リンパ組織の誘導は目立たず、形成された三次リンパ組織にも未熟なものの割合が高いことが確認されました。さらに高齢者の解析においても、慢性腎臓病合併症例は非合併症例と比較して三次リンパ組織の数は有意に多く、より成熟度の高い三次リンパ組織の割合が多いことが確認されました。以上より、三次リンパ組織の成熟度は腎臓の組織障害度を反映する新規腎障害組織マーカーとなり、治療介入の効果判定にも有用である可能性が示されました。

これらを元に遺伝子発現情報データとELISA dataも併せてバイオマーカー候補分子を同定した。

備考

2019年6月　2019年度日本抗加齢医学学会研究奨励賞
2019年12月　第3回Japan Kidney Council 　優秀賞

研究成果

• [国際共同研究] Department of Nephrology/RWTH University of Aachen/Aachen(ドイツ)
  • 国名: ドイツ
  • 外国機関名: Department of Nephrology/RWTH University of Aachen/Aachen
• [国際共同研究] Institute of Pathology/RWTH University of Aachen/Aachen(ドイツ)
  • 国名: ドイツ
  • 外国機関名: Institute of Pathology/RWTH University of Aachen/Aachen
• [雑誌論文] Developmental stages of tertiary lymphoid tissue reflect local injury and inflammation in murine and human kidneys (2020)
  • 著者名/発表者名: Yuki Sato, Peter Boor, Shingo Fukuma, Barbara M. Klinkhammer, Hironori Haga, Osamu Ogawa, Jurgen Floege and Motoko Yanagita.
  • 雑誌名: Kidney International 巻: in press. ページ: in press.
  • DOI: in press
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] The Rbm7-NEAT7 axis promotes the development of fibrosis (2020)
  • 著者名/発表者名: Kiyoharu Fukushima, Takashi Satoh, Fuminori Sugihara, Yuki Sato, Toru Okamoto, Sachiyo Yoshio, Songling Li, Satoshi Nojima, Daisuke Motooka, Shota Nakamura, Hiroshi Kida, Daron M. Standley, Eiichi Morii, Tatsuya Kanto, Motoko Yanagita, Yoshiharu Matsuura, Takashi Nagasawa, Atsushi Kumanogoh, and Shizuo Akira.
  • 雑誌名: Immunity 巻: 52 ページ: 542-556
  • DOI: 10.1016/j.immuni.2020.02.007.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Ablation of myeloid cell MRP8 ameliorates nephrotic serum-induced glomerulonephritis by affecting macrophage characterization through intraglomerular crosstalk (2020)
  • 著者名/発表者名: Y Hata, Takashige Kuwabara, Kiyoshi Mori, Yonna Kan, Yuki Sato, S Umemoto, Daisuke Fujimoto, T Kanki, Y Nishiguchi, Hideki Yokoi, Y Kakizoe, Y Izumi, Motoko Yanagita and Masashi Mukoyama
  • 雑誌名: Scientific reports 巻: 10 ページ: 3056
  • DOI: 10.1038/s41598-020-59970-9.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Pathophysiology of AKI to CKD progression (2020)
  • 著者名/発表者名: Yuki Sato, Masahiro Takahashi, Motoko Yanagita.
  • 雑誌名: Semin Nephrol 巻: 40(2) ページ: 206-215
  • DOI: 10.1016/j.semnephrol.2020.01.011.
  • 査読あり
• [雑誌論文] The immunology of aging kidney (2019)
  • 著者名/発表者名: Yuki Sato, Motoko Yanagita
  • 雑誌名: Nature Review Nephrology 巻: 15 ページ: 625-640
  • DOI: 10.1038/s41581-019-0185-9.
  • 査読あり
• [雑誌論文] The unprecedented era of aging (2019)
  • 著者名/発表者名: Yuki Sato, Motoko Yanagita
  • 雑誌名: Inflammation and regeneration 巻: 39 ページ: 15
  • DOI: 10.1186/s41232-019-0104-2.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Functional heterogeneity of resident fibroblasts in the kidney (2019)
  • 著者名/発表者名: Yuki Sato, Motoko Yanagita
  • 雑誌名: Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 巻: 95(8) ページ: 468-478
  • DOI: 10.2183/pjab.95.033.
  • 査読あり
• [学会発表] 三次リンパ組織を軸とした高齢者腎臓病の新規治療戦略の開発（2019年度日本抗加齢医学会研究奨励賞受賞講演） (2019)
  • 著者名/発表者名: 佐藤有紀
  • 学会等名: 第19回日本抗加齢医学会総会 2019年6月14日-6月16日 横浜
  • 招待講演
• [学会発表] 老化と炎症：なぜ高齢者AKIは治りにくいのか？ (2019)
  • 著者名/発表者名: 佐藤有紀、柳田素子
  • 学会等名: 第49回日本腎臓学会西部学術 2019年10月18-19日 高知
  • 招待講演
• [学会発表] 腎臓病における三次リンパ組織：臨床応用への展望 (2019)
  • 著者名/発表者名: 佐藤有紀
  • 学会等名: 第1回若手腎臓内科医のための基礎研究 2019年12月15日 東京
  • 招待講演
• [図書] 尿細管間質障害の進展機序 (2019)
  • 著者名/発表者名: 佐藤有紀、柳田素子
  • 総ページ数: 5
  • 出版者: 東京医学社 「腎と透析」
• [図書] 腎臓と線維化 (2019)
  • 著者名/発表者名: 佐藤有紀、柳田素子
  • 総ページ数: 5
  • 出版者: 北隆館 BIO Clinica