研究実績の概要 |
研究当初はmitoQC マウス(GFP-mCherry-Fis1発現マウス[Fis1はミトコンドリア構成因子])を用いて腎近位尿細管のマイトファジー活性を検証する予定であった。本マウスはミトコンドリアがリソソームに取り込まれた時点で、酸性環境によりGFPの蛍光強度が消失し、mCherryの蛍光が残ることでマイトファジーの検出を可能にする(McWilliams TG, et al.J Cell Biol.)。既報の通り定常状態では近位尿細管でGFP陰性mCherry陽性のdotの蓄積を著明に認めた一方、電子顕微鏡での観察では定常状態でほとんどマイトファジーを認めず、結果に矛盾が生じた。mitoQC マウスで尿細管にmCherry陽性dotの蓄積を認めるのは、他臓器から排泄されたmCherryを尿細管が取り込んでいることによる可能性を考え、尿細管特異的にmCherry-GFP-MTS[MTSはミトコンドリアの構成因子]を発現するマウスを作製し、今後解析予定である。 また電子顕微鏡下での観察により、1型糖尿病モデルマウス(ストレプトゾトシン投与マウス)において、オートファジーが活性化していること、またオートファジーを欠損させたところミトコンドリア傷害が顕著になることから、1型糖尿病におけるマイトファジーの重要性が明らかとなった。現時点では、既知のマイトファジー関連分子であるPINK1/Parkinの活性化を確認していることから、腎尿細管におけるマイトファジーの一部はPINK1/Parkin依存性であると考えている。しかし腎尿細管におけるマイトファジーがPINK1/Parkinによってのみ生じるのか、あるいは別の分子によって生じるのかが今後の課題である。この問題についてはPINK1あるいはParkinの欠損マウスとマイトファジーモニタリングマウスを交配することで解決可能と考えている。
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