常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の病態の解明を目的として、患者の血液検体および摘出腎などを用いて、これまで言われてきているtwo-hit theoryの検討および解明を行い、最終的にはその知見から新たな治療法の可能性を探る目的で研究を行ってきた。 前年度から継続して同意が得られた症例でのNGS検体での解析およびSanger法での直接シークエンスでの確認を継続した。この遺伝子変異検出に時間を要した。その原因としてPKD1、PKD2のpseudo geneなどの関係でNGSでの検索で変異を検出できる能力が想定よりも低かったことが考えられる。そのため、NGSでの検索不十分な範囲をSanger法で確認することを繰り返してきた。結果として遺伝子変異を同定できた症例は蓄積できているが、検索効率などを考慮すると現状では難しい。そこで、NGSでの最初のスクリーニングの検索効率向上を目的として、昨年度から継続して、疾患パネルの作成を目的としてメーカーとの協議を継続している。昨年度からと合わせて複数例で遺伝子変異を同定した症例を蓄積している。ある程度の数が蓄積した段階で、患者血液由来のDNAと同時に腎臓摘出術や移植術の際に患者から摘出した腎臓の嚢胞上皮細胞から抽出したDNAについても検索を行う予定である。 また、摘出腎臓からの組織には限りがあるため、その摘出腎臓からの嚢胞上皮細胞の単離培養を試みていた。過去の文献などを参考として、摘出腎臓からの組織片を用いた培養細胞の樹立を行い、手技の統一化を図り現在、培養細胞もある程度の確率で保存できる状態となっている。これにより培養細胞から抽出したDNAやmRNAでの検討も今後行うことが可能となった。
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