IgA腎症自然発症モデルマウスに対しガレクチン-9の投与実験を行い、尿蛋白やアルブミン尿、尿素窒素、腎組織像について評価したが、コントロール群と比べて差は認めなかった。CRSPR/Cas9法を用いてガレクチン-9ノックアウトマウスの作製に成功した。これは今回独自に作製したものであり、CRSPR/Cas9法を用いたという点でも意義深い。作製したマウスにおいては、DNAシーケンスにて変異を確認しており、ELISA法にて血中のガレクチン-9濃度が検出限界以下であることも確認しており、変異に関しては確証を得ている。繁殖に際し、授乳中に母親マウスが高率に死んでしまうことが続いたが、現在は安定して繁殖可能となっている。 IgA腎症患者の血中・尿中ガレクチン-9濃度を測定し、臨床的・組織学的重症度や腎機能、治療反応性等との相関関係について明らかにする臨床研究を当大学の倫理委員会の承認を得て進めている。IgA腎症だけでなく、より広く腎疾患とガレクチン-9との関係について検討するため、IgA腎症患者に限らず、腎生検を行う患者に対象を広げるようにプロトコールを一部変更した。これまで単一の疾患とガレクチン-9濃度との関係について検討した報告はあるものの、複数の疾患を網羅的に検討した報告はなく、新たな試みといえる。登録症例数は30症例を超え、引き続き症例を蓄積していく予定。解析途中ではあるが、一部の血中・尿中のガレクチン-9を測定したところ、原疾患によってその濃度に差を認める可能性が示唆された。 また、本研究で作製されたノックアウトマウスを用いて敗血症およびそれに伴う急性腎傷害モデルを作製し、ガレクチン-9との関係を明らかにする研究が行われている。
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