研究課題/領域番号 |
17K16091
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
畝田 一司 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90780370)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レニン・アンジオテンシン系 / アンジオテンシンII / AT1受容体 / ATRAP |
研究実績の概要 |
世界的に慢性腎臓病の増悪による末期腎不全患者の増加傾向が認められ,その病態解明と治療戦略が, 臨床および医療経済において非常に重要な課題の一つとなっている.レニン・アンジオテンシン系(RA系)は,高血圧,動脈硬化を介した腎障害や心血管系障害の病態に密接に関与している.RA系の中で,特に1型アンジオテンシンII(Ang II)受容体(AT1受容体)とその情報伝達系の組織局所での活性化が重要な役割を演じているとされる.本研究では,高血圧および高血圧関連生活習慣病の発症・進展とそれにともなう心血管系障害,腎障害を増悪させるAT1受容体に結合する低分子蛋白(AT1 receptor-associated protein; ATRAP)に焦点を当て,腎障害および高血圧の発症・進展におけるATRAPの病態生理学的意義について明らかにすることを目的とする. 現在我々は野生型マウスをベースに作製した腎障害モデル動物,および発生工学的手法により作製した腎尿細管ATRAP欠損マウスの解析に取り組んでいる.腎障害モデル動物として,片側尿管結紮マウス(腎線維化モデル)や5/6腎臓摘出マウス(慢性腎不全モデル)を作製し,腎障害とATRAP・AT1受容体の発現量との関連を検討中である.また,Cre-loxPシステムを用いて近位尿細管特異的ATRAP欠損マウスの作製に成功した.現在,近位尿細管特異的ATRAP欠損マウスのATRAPの減少率を Laser Microdissection法で慎重に解析しつつ,腎障害モデルを作製して野生型モデルとの比較を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発生工学的手法を用いた近位尿細管特異的ATRAP欠損マウスの作製に成功しており,腎障害モデルの作製も研究室内で確立出来たため.
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した方針に変更はない.近位尿細管特異的ATRAP欠損マウス,腎尿細管ATRAP高発現マウス,野生型マウスをベースに腎障害モデルを作製し,高血圧および腎障害の発症・進展を比較する.さらに当院の腎生検の残余組織検体を用いて,ATRAP の免疫組織化学検査による蛋白発現解析とレーザーマイクロダイセクション法およびRT-PCR 検査による遺伝子発現解析を行うことで,腎障害および高血圧の発症・進展におけるATRAPの病態生理学的意義について明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
近位尿細管特異的ATRAP欠損マウス作製に関わるマウスの交配に想定以上の時間がかかり,近位尿細管特異的ATRAP欠損マウスを用いる腎障害解析実験の実施が年度を越えることとなったため,実験試薬費の一部がH29年度報告として計上出来なかったから. なお,近位尿細管特異的ATRAP欠損マウスの作製にはすでに成功しているため,予定の実験数は申請書と変更なく,H30年度報告においては予定交付額と次年度使用額をあわせた支出額となる予定である.
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