研究課題
腎臓における1 型アンジオテンシンII(Ang II)受容体(AT1 受容体)を介したレニン・アンジオテンシン系の活性化は,高血圧の病態形成に重要である.本研究では,AT1 受容体結合蛋白(AT1 receptor-associated protein; ATRAP)に着目し,Ang II依存性高血圧に対する腎尿細管ATRAPの病態生理学的意義について検討した.全身性ATRAP欠損マウス,腎尿細管ATRAP高発現マウスに対してAng IIの慢性投与を行うと,前者では高血圧の増悪と尿細管Na再吸収量の増加(Naバランスの増悪)を認め,反対に後者では高血圧の改善と尿細管Na再吸収量の減少(Naバランスの改善)を認めた.このことから,腎尿細管ATRAPはAng II依存性高血圧の抑制に重要と考えられた.次に,この抑制に主要な役割を担うATRAPの尿細管発現部位を明らかにするため,PEPCK-CreマウスとCre-loxpシステムを用いて近位尿細管特異的ATRAP欠損マウス(PT-KO)を作製した.PT-KOの近位尿細管におけるATRAP mRNA発現量は野生型マウス(WT)の2割程度であったが,遠位尿細管におけるATRAP mRNA発現量はWTと同等に保たれていた.次にPT-KO,WTにAng II(1000 ng/kg/min)を2週間持続投与し,血圧,Naバランスを解析し,さらにPCR法,組織学的手法で腎障害を評価した.結果として,Ang II慢性投与下のPT-KOの血圧上昇,NaバランスはWTと同等であり,腎障害もWTと群間差を認めなかった.以上をまとめると,Ang II依存性高血圧は近位尿細管におけるATRAPの発現抑制により増悪を示さなかった.すなわち,近位尿細管におけるATRAPがAng II依存性高血圧の病態に与える影響は小さいと考えられた.
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Journal of the American Heart Association
巻: 8 ページ: e012395
10.1161/JAHA.119.012395