研究課題
細胞内蛋白輸送に関わる酸性オルガネラを構成するV-ATPaseの線維化に対する役割について腎内構成細胞(腎集合管細胞および糸球体上皮細胞)で検討した。腎集合管細胞におけるV-ATPaseの役割を検討:腎集合管細胞(M-1細胞)の市販の細胞株を培養後TGF-β1もしくはTGF-β1+バフィロマイシン A1(V-ATPase阻害薬)を投与した。線維化蛋白フィブロネクチンの免疫染色でTGF-β1によりM1細胞にfibronectinの発現が確認され、これはV-ATPaseの抑制により減少した。糸球体上皮細胞(C7細胞)におけるV-ATPaseの役割を検討:培養糸球体上皮細胞においても同様にTGF-β1刺激をした所、免疫染色におけるフィブロネクチンの細胞周囲への増加が認められたが、リアルタイムPCRやウェスタンブロット法によるmRNAおよびタンパク発現は増加しなかった。一方、α‐smooth muscle actinはTGF-β1によりmRNAの発現が増加していた。これらのフィブロネクチンやα‐smooth muscle actinの反応はbafilomycinで抑制された。さらに、V-ATPase活性をLysotracker redで検討した所、TGF-β1刺激により糸球体上皮細胞のV-ATPaseは上昇し、bafilomycinの投与により改善した。これらの結果よりV-ATPaseは腎内細胞の線維化に関与することが示された。特異的なV-ATPase抑制を検討するため、V-ATPaseのsiRNAを作成しリポゾームを用い培養細胞内に投与した所、V-ATPaseの発現の抑制が確認された。
2: おおむね順調に進展している
腎内構成細胞を集合管細胞および糸球体上皮細胞の複数で検討しており、多くの条件検討を要している。しかしながら、どちらの細胞でもTGF-β1による線維化が観察され、これにバフィロマイシンA1による抑制が確認され、免疫染色、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロット法などから、線維化タンパクが細胞外に発現し、V-ATPaseが関与することが明らかにすることができた。V-ATPaseをより選択的に抑制するために、siRNAによる遺伝子抑制の実験系を確立することができ、おおむね順調に進展している。
複数の腎内構成細胞でV-ATPaseを介した腎線維化を確認するとともに、V-ATPaseの発現をオルガネラ別に検討し、酸性オルガネラを介した線維化タンパク輸送機序を解明する。V-ATPase特異的な遺伝子抑制により、線維化タンパクの細胞外への輸送がバフィロマイシン同様に抑制できるかを確認する。さらに、細胞外への輸送が阻害されたタンパクがライソゾームなどで代謝されるかどうかを検討する。また、実験動物を用い、生体内でV-ATPaseが腎線維化に関与しているかを遺伝子抑制もしくはV-ATPase阻害薬の投与により検証する。2017年11月よりダルハウジー大学(カナダ、ハリファックス)の腎臓内科Michael West医師のもとへ留学中である。
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 2648
10.1038/s41598-018-20940-x