研究課題
ATP駆動性のプロトンポンプであるVacuolar-ATPase(V-ATPase)はオルガネラ小胞内のpH調節により蛋白細胞内輸送や細胞外分泌の中心的役割を担っており、また腎線維化抑制は重要な課題でありその機序を解明することは重要である。『V-ATPaseの活性化が、TGF-β刺激による細胞外への線維化関連蛋白分泌を亢進させ、腎間質の線維化に関与している』と仮説を立て細胞内蛋白輸送に関わる酸性オルガネラを構成するV-ATPaseの線維化に対する役割について腎内構成細胞(腎集合管細胞)で検討することを目的とした。マウスの腎皮質集合管から採取された細胞をSV40によって不死化し作成したM1細胞を使用し、コントロールとバフィロマイシン(BAF:V-ATPase阻害薬)、TGF-β、TGF-β+BAFの3種の刺激を行い細胞の線維化におけるV-ATPaseの役割をqPCRと免疫染色で検討した。線維化蛋白であるフィブロネクチン(Fn1)についてTGF-β刺激ではコントロールに比して亢進しており、TGF-β+BAFでは、それが抑制されていた。免疫染色でもTGF-β刺激によるFn1の発現増加がTGF+BAFでは抑制され、細胞質内にとどまっているのが観察できた。また動物実験として7週齢の雄性Sprague-Dawleyラットを4群にわけ、片側尿管閉塞モデル(UUO)を作成してBAFあるいはコントロールのDMSOを腹腔内投与したのち、腎・肝・心臓をサンプリングした。UUOを施術した左腎における線維化が一部抑制されていた。一方コントロールとして評価した右腎はDMSO・BAF群間で変化は認めなかった。しかしながら肝重量の増加および肝線維化が認められ肝毒性が強く認められてしまったためBAFの線維化効果より肝毒性が上回ってしまっていると考えられ、UUOの治療として使用することは困難と考えられた。
すべて 2020 2019 その他
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
https://tohokupd.jimdo.com