研究課題
これまで我々の研究室では、心臓・腎臓などの臓器障害やひいては生命予後にも深く関与することが知られる核内受容体の1つ、ミネラルコルチコイド受容体(以下MR)についてその活性化機構の解析を進めてきた。直近では、腸管上皮特異的にCreを発現するVillin-CreマウスとMR floxマウスとの交配で得られた腸管上皮特異的MR欠損マウス(以下Vil MR-KO)を用いて、腸管上皮MRが生体のNa恒常性に深く関与していること、塩分過剰かつMR活性亢進下の血圧上昇に寄与することを明らかにした。本研究では、前年度の検討において、尿細管特異的にCreを発現するKSP-CreマウスとMR floxマウスを用いて腎尿細管特異的MR欠損マウス(以下KSP MR-KO)を作出し、KSP MR-KOではControlに比べ、尿中Na排泄の亢進およびその代償と思われる便中Na排泄の低下を認め、Na出納においてVil MR-KOとは対照的な表現型を呈することを明らかにした。今年度は、これらのNa動態の違いが血圧代謝病態にもたらす差異を探求するべく、Control、Vil MR-KO、KSP MR-KOの3群に高脂肪食を負荷し、その表現型の比較解析を行った。Controlでは、高脂肪食の長期負荷において、体重増加とともに血圧・空腹時血糖の上昇、尿中アルブミンの増加を認め、MR標的遺伝子であるSgk1発現の上昇を認めた。血中アルドステロンの上昇は見られず、何らかの機序でMRが活性化され、MR感受性が亢進している病態が考えられた。一方、Vil MR-KOにおいては、Controlに比べ体重増加が抑制される傾向を認め、血圧上昇は有意に抑制されていた。KSP MR-KOは妊孕性が落ちている影響か、十分なサンプルサイズの確保に難渋しており、ControlおよびVil MR-KOと比較した有意差検討はできていない。
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Journal of the American Heart Association
巻: 13 ページ: -
10.1161/JAHA.117.008259.