研究課題/領域番号 |
17K16098
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
都川 貴代 東海大学, 医学部, 助教 (50631842)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二次性副甲状腺機能亢進症 |
研究実績の概要 |
(1) 5/6亜腎摘ラットを用いた高効率PDTの手法の構築:腫瘍親和性光感受性物質プロトポルフィリンⅨの前駆物質である5-アミノレブリン酸(5-ALA)の高用量投与下における高熱量照射による生存率の低下をカルシウム静注により抑制して光線力学的治療(PDT)の成功率を上げる手法を構築し、照射直後のカルシウム投与により高用量高熱量照射後の低カルシウム血症による生存率の低下を75%にまで上げる事が可能となった。 (2) 血管形成阻害による照射副甲状腺の再生抑制手法の構築:PDT処置後の副甲状腺の再生を抑制するために、照射された副甲状腺における血管形成を阻害する実験を行った。低用量5-ALAと低熱量光照射による5/6亜腎摘ラットに負担の少ない条件でのPDTを行った後に、ラットでの血管新生阻害効果を持つことの知られているCaptoprilを継続投与し、照射副甲状腺における有意な血管新生阻害効果を確認した。 (3) 過形成副甲状腺に対するPDTの実用化の検討:臨床応用への課題検討のために中型動物を用いたPDTを実施する目的で、ヤギにおける腎不全の作製手法を開発し、副甲状腺の過形成進行と機能亢進について確認した。これにより、副甲状腺機能亢進症モデル動物の作製手法が確立され、PDT処置実験の施行が可能になった。当初予定していたニワトリを用いたPDTは、腎不全動物を作製するための腎臓の摘出が骨格の問題で難しいことが判明し、中止された。ブタの使用可能性については次年度、検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高用量高熱量PDT後の低カルシウム血症による死亡率の増加を、照射直後のカルシウム投与により防ぐことで生存率を75%にまで上げることができた。投与量と投与のタイミングを調整することで、さらに生存率をあげることも可能と思われる。 また、血管新生阻害剤による照射副甲状腺の血管新生が抑制されることが明らかになり、再生抑制の可能性が示された。 さらにヤギを用いた二次性副甲状腺機能亢進症のモデル動物も作製可能となり、これに対するPDTを行うことで、臨床応用に向けた課題を明らかにすることが可能となった。 これらの成果は、二次性副甲状腺機能亢進症に対する光線力学的治療法の臨床応用の可能性を示しており、昨年度の課題はおおむね達成したものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 5/6亜腎摘ラットを用いた高効率PDTの手法の構築:前年度の成果を元に設定されたいくつかのPDT実施条件について、照射の間隔や回数などの最適化を図り、長期飼育での生存率、PTH分泌能の低レベルでの維持、副甲状腺退縮などへの効果を検証する。これらの検討により過形成副甲状腺に対する高効率PDTの手法を構築する。 (2) 血管形成阻害による照射副甲状腺の再生抑制手法の構築:前年度の成果に加え、その他の血管新生阻害薬(血管内皮増殖因子の阻害薬や抗体、Cox-2阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、アルテミシニン誘導体など)も試験して、副甲状腺再生抑制効果の認められたいくつかの薬剤を、(1)で開発された高効率PDT手法と組み合わせ、より確実なPDT手法の開発について検討する。 (3) 過形成副甲状腺に対するPDTの実用化の検討:中型動物の副甲状腺機能亢進症モデルに対して、これまでに構築されたPDT手法を実施し、臨床応用へ向けた手法の改良を行う。予測される課題としては、動物の大型化にともなう5-ALAやカルシウムの投与量、照射光源強度や照射時間などの適正化が考えられる。また、副甲状腺の大きさや位置(深さ)の変化による照射範囲の拡大が必要な場合は、光源の数を増やすなどして対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費はほぼ計画通りに使用され、多少の誤差があったが1万円以内に収められた。残額は次年度の物品費に追加する予定である。
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