研究課題/領域番号 |
17K16099
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
金井 厳太 東海大学, 医学部, 講師 (00535221)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 副甲状腺機能亢進症 / microRNA / 次世代シーケンサー / 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
摘出標本を用いた網羅的miRNA解析では、二次性副甲状腺機能亢進症患者から摘出した副甲状腺の重量を計測し最大腺および最小腺より、得られたRNAを用いてmiRNAを網羅的に解析を行った。最大腺(受容体発現陰性細胞)と最小腺(受容体発現陽性細胞)間でのmiRNAの発現量を比較し、受容体分子の発現制御に関連すると想定されるmiRNAを絞り込む。副甲状腺組織から抽出したtotal RNAからMiSeqを用いてsmall RNA sequencingを実施した。Small non-cording RNA配列マッピングにはhuman miRNA database(miRBase)を利用した。 マッピングされた既知のmiRNAはmiRDeep*を用いて解析パイプラインedgeR、DEseqにより調査された。最大腺と最小腺において比較したところ既知のmiRNA 13配列において有意差を認めた。未知のSmall non-cordingRNAにおいて602配列で有意差が認められた。今後、発現量が多い上位2配列のSmall non-cording RNAについての機能解析を検討する。 既存の発現分子との関連を調べるため、副甲状腺のホルマリン固定パラフィン包埋標本からの遺伝子発現解析を試みた。上記の候補miRNAの発現を測定したところ、摘出副甲状腺重量との明らかな相関は認められなかった。副甲状腺に発現するPTH、CASR、VDR、FGFR1、KL、MKI67を対象として定量リアルタイムPCRにてmRNAの発現を測定した。単変量解析ではmiR148aはCASR、FGFR1、PTHにおいて中程度の負の相関を認めた。重回帰分析を用いて4つの候補miRNAとの発現相関を確認した。これらはPTHおよびCASR、MKI67と有意な相関を認めた。これらの結果から、副甲状腺重量で異なるこれらmiRNAが副甲状腺の増殖・分泌に関わる転写後調節に影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織中のmiRNA発現量は制御するタンパク質の発現量と反比例することから、受容体の発現制御に関わるmiRNAも受容体の発現低下と反比例して発現量が増幅すると推測される。最小腺に比較して最大腺では特定のmiRNA発現は有意に上昇していたことから、疾患の進展による受容体発現減少とmiRNA発現には何らかの関連があると予想されるが、その機能に関しては不明な点が多く、同定されたmiRNAの阻害による受容体発現の検証が必要である。近年、わが国ではヒト副甲状腺摘出術が著しく減少しており、検体となる副甲状腺細胞の入手が極めて困難になっている。miRNA機能検証のため、他の細胞を用いる必要性を検討しており、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
特定された候補miRNAの機能を明らかにするため、副甲状腺初代培養細胞もしくは標的遺伝子を発現する細胞株を用いて実験を行う。候補miRNA mimicおよびinhibitorを細胞へ導入しPTH、CASR、VDR、FGFR1、KL、MKI67等の発現をqPCRで測定する。Target scanを用いた解析ではこれらの候補miRNAは上記遺伝子に対する結合部位が明らかになっているものもあるため、miRNA結合とmRNA分解による転写後調節への関与を明らかにすることができると思われる。 また、副甲状腺細胞増殖の過程にはモノクローナルな結節性増殖が考えられており、このメカニズムに関わるmiRNAの影響を調べるため、副甲状腺組織における既知の遺伝子発現とmiRNA発現の局在に関してISHを用いて明らかにする。さらに、miRNAのバイオマーカーとしての役割を調べるため、手術前後の患者血液を採取後、超遠心分離法によりmiRNA を内包するエクソソームを分離し、miRNAを含むRNAを抽出後、定量PCR法により組織中で確認された候補miRNAが検出可能か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通りに使用されたが、一部物品の価格変動が発生したため。次年度使用額については翌年度分として請求した助成金と合わせて細胞培養関連試薬を購入する予定である。
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