研究課題
若手研究(B)
我々は当初「糸球体硬化症ではI型コラーゲンがα1(I)2α2(I) heterotrimerからα1(I)3 homotrimerへと変容する」との仮説を立て検証を行った.質量分析を用いた蛋白レベルでの検討において,この仮説を証明することは出来なかった.しかし,質量分析による網羅的な検討により,硬化糸球体においてコラーゲンの主構成アミノ酸であるglycineの産生経路の律速酵素であるPHGDHが著増しており,この経路の亢進が糸球体硬化症の発症・進展に重要な役割を果たしていることが示唆された.
腎臓病学
当初の仮説を立証することは出来なかったが,質量分析による検討から糸球体硬化症の発症機序に関し「硬化糸球体ではPHGDH産生が亢進し,この酵素を阻害することにより糸球体硬化症が軽減する」という新たな仮説の着想に至った.この仮説に基づいた研究はコラーゲンの主構成アミノ酸glycineの産生経路に着目したユニークなものであり,不可逆的な病態で現時点で有効な治療が確立されていない糸球体硬化症の新規治療法の開発に繋がることが期待される.