本研究ではin vivoでのmiR-29bによる腎線維症抑制を目的とした.Micro RNAのデリバリーツールとしてAAV(アデノ随伴ウイルス)を使用した.AAVは非病原性で,近年ではヒト遺伝子治療の臨床治験でも使用されている.AAVには1-11までのセロタイプが存在しており,各セロタイプは異なる組織親和性を有している. 腎臓細胞に特異的なウイルスベクターを決定するため,in vitroにて尿管上皮細胞及び腎線維芽細胞へ1-9までの各セロタイプのGFP遺伝子を搭載したAAVベクターを感染させ,フローサイトメトリーにてその感染効率を検証した.その結果、AAV2/6のセロタイプが腎臓細胞に親和性が高いことが判明した.その後マウス腎臓への経腎盂的投与により,腎臓へ効率的に遺伝子導入可能なセロタイプを検証したところ,AAV6の遺伝子導入効率が最も高いことが判明した. また本研究ではmiR-29bを高発現するAAVベクターを作成するため,より効率よくmature体が切り出されるためのmiR-29b前駆体二次構造を検討した.結果,miR-29b-precursor体のループ構造を,先行研究でより安定性が高く,よりDicerによるプロセシングが促進される構造であると報告されているmiR-30のループ構造に置換したベクターにおいて,miR-29bの発現が最も高いことが判明した. 最終年度ではこの作成したmiR-29b高発現AAV6ベクターを腎線維症モデルマウスである,UUOマウスに投与し,腎線維症抑制の検討を行った.結果,尿管上皮細胞においてSnail1の発現を抑制することで,腎間質線維化の抑制を認めた. 本研究成果はClinical and experimental Nephrologyにて発表した(Clin Exp Nephrol . 2019 Dec;23(12):1345-1356.).
|