研究課題/領域番号 |
17K16102
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
山中 修一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80775544)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腎臓再生 / ネフロン前駆細胞 / 前駆細胞 / iPS細胞 / ジフテリアトキシン |
研究実績の概要 |
動物胎生期の腎臓内部に存在する腎発生領域に異種のネフロン前駆細胞(NPC)を移植し、移植する環境の腎発生シグナルを借りることで、移植細胞からネフロンを新たに再生する現象について研究している。申請者はNPCに特有に発現するSix2遺伝子に着目し、Six2遺伝子が発現する細胞だけにconditionalに細胞を除去するジフテリアトキシン(DT)自殺誘導モデルを用い、外来性のNPCを移植すると共にホストのNPCにたいし自殺誘導を行うことで、NPCの腎発生領域内での入れ換えを考案した。マウスのMouse-NPCをDTで自殺誘導し、同時にラットのRat-NPCを移植したところ、マウスの腎発生領域内でRat-NPCからラットのネフロン再生を示した。我々は異種間でも腎発生シグナルの相同性からネフロンへの分化誘導が可能であることを見いだした。げっ歯類ではDT受容体をSix2 promoter下にノックインすることで自殺誘導モデルを確立できたが、ヒトネNPCを移植細胞にする場合には、ヒトはDT受容体をユビキタスに発現しているため、DTによる選択的な自殺誘導は不可能であった。そのたDT自殺誘導モデルではなく、タモキシフェンを投与することでジフテリアトキシンAフラグメント(DTA)が発現し特異的に細胞を除去が可能な、Six2-ERT2-CreとloxP-DTAの組み合わせによるNPC除去システムに変更した。このタモキシフェン誘導システムを用いることでヒト細胞移植時にも自殺誘導の影響を移植細胞側(ヒト細胞側)に与えることなくNPC置換を進めることが可能と考えた。今回、我々はin vitroでヒトiPS細胞からNPCを分化誘導し、誘導ヒトNPCをマウスの置換モデルを搭載した胎生期腎臓に移植、移植細胞からの腎再生をin vitro,in vivo両面で検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Six2-ERT2-CreとloxP-DTAの組み合わせで産出させた胎生期マウス腎臓に、まずマウスNPCを移植しタモキシフェンを同時投与し腎再生を検討した。器官培養下でタモキシフェン投与による同種間NPC置換および移植NPC由来のネフロン再生を認めた。さらに、細胞移植した後腎を成獣マウスの後腹膜へ移植したところ、in vivoでもネフロン再生が可能であった。さらに申請者らはラットNPCを移植し異種間でもネフロン再生が可能であるか検討したところ、in vitroとin vivoともに問題なくネフロン再生を示した。げっ歯類でのタモキシフェン駆動ネフロン前駆細胞置換システムが機能することを示した。次に我々はヒトiPS細胞をTaguchi A, Cell stem cell, 2014の手法を用いネフロン前駆細胞(NPC)まで誘導し、誘導ヒトNPCを作製を試みた。誘導ヒトNPCはマウス脊髄との共培養でネフロンへの分化を示すことが可能であった。さらに誘導細胞をソーティングすることでより簡便に高純度のNPCを移植用に準備することが可能であった。タモキシフェン駆動ネフロン前駆細胞置換システム搭載した胎生期マウス腎臓に誘導ヒトNPCの移植によるネフロン再生を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
タモキシフェン駆動ネフロン前駆細胞置換システム搭載した胎生期マウス腎臓に誘導ヒトNPCの移植によるネフロン再生を検討している。NPC分化誘導の品質には、iPS細胞の品質が大きく影響してしまう。質の良いNPCを誘導するためのヒトiPS細胞の未分化維持には多くの時間と労力を要すため、移植実験に使用する細胞の準備頻度がやや遅れており、実験回数も制限されている。現在は複数人でのiPS細胞維持培養と均一した品質管理および分化誘導を行うことで、より高頻度での実験が行えるように調整中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遅延により物品費の支出が想定より少なく、次年度に使用額が生じました。
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