研究課題
高齢者の増加、医療技術の進歩により、医原性の急性腎障害(AKI)の発症頻度が、世界的に増加している。しかし、AKIの治療法は、十分に確立していない。腎臓は、一度虚血刺激を受けると、虚血耐性を獲得し、2度目の虚血に対し抵抗性を示す。本研究では、腎臓が虚血耐性を獲得する機序に、エピジェネティックメディエーターとしてのポリコームグループタンパク質(PRC1構成蛋白 Bmi1およびSCMH1)が重要であることを明らかにする。2017年度は、in vivoの系で、Bmi1およびSCMH1の発現を検討した。その結果、腎臓におけるBmi1およびSCMH1の遺伝子発現は、1回目腎虚血1日後では、発現に変化を認めなかったが、1回目腎虚血20日後で有意に増加し、2回目虚血後も高値のまま維持された。さらに、1回目の虚血20日後の腎を使用し、Chip-qPCRを行い、SCMH1の転写調節のヒストンアセチル化(H3K14Ac)を確認した。この結果は、1回目の腎虚血によりSCMH1の転写調節でヒストンアセチル化が生じ、SCMH1発現が増加し、さらに2回目の腎虚血および虚血後もSCMH1の発現が維持された可能性が示唆された。2018-2019年度は、ヒト近位尿細管細胞(HK2細胞)を使用し、Bmi1およびSCMH1の細胞保護作用をsiRNAを使用し検討した。その結果、1%低酸素では細胞障害が軽微であったが、0.2%低酸素では、細胞障害マーカーであるLDHがSCMH1の発現を抑制した場合にのみ、有意に増加した。さらに、2019年度は、細胞生存率で評価したが、SCMH1発現の抑制により、有意に低下した。近位尿細管におけるSCMH1発現は、腎保護的に作用している可能性がある。今後は、そのメカニズムを明らかにする。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Journal of Diabetes Research
巻: - ページ: -
Kidney & Blood Pressure Research
巻: 44 ページ: 1476-1492
10.1159/000503926