研究成果の概要 |
我々は糖尿病腎症の新規治療標的としてミトコンドリア内に局在するサーチュインであるSirt3とNAD+分解酵素CD38に着目し,CD38の抑制がNAD+の増加とSirt3の活性化を通して,腎障害を改善しうるかを解明することを目的とした。糖尿病ラット・高ブドウ糖培養下腎尿細管細胞へのCD38阻害薬(フラボノイド「アピゲニン」)の投与が腎症進展抑制になりうる可能性を示すことができ,成果報告として2018年Redox reports誌に掲載,2019年度日本抗加齢学会研究奨励賞を受賞,アメリカ糖尿病学会を初めとした国際学会で発表し,さらに2020年Aging誌に投稿し,5月受理,後日掲載予定である.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
我が国では糖尿病患者数の増加とともに糖尿病腎症(以下腎症)を有する患者数が増加している。腎症を原因として新規透析療法を導入される患者数は第1位であり,腎症の克服は解決していくべき課題であると考えられる。現在,腎症に対する治療は、血糖・血圧・脂質管理を中心とする包括的治療が推奨されているが,未だ十分であるとはいい難く,新規治療の開発が望まれていた. 今回我々はCD38とSirt3という今までにない腎症の新たな治療標的に着目し,CD38抑制効果を持つフラボノイドの経口投与によって腎症の進展を抑制できる可能性を見出した.近い将来に,簡便に,我々の腎症改善の効果を期待できうる成果を得たと考えている.
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